2019 年から 2020 年のドイツにおいて、高リスククローンの地域的な広がりを特定することを目的とした近隣の 2 つの 3 次病院におけるカルバペネム耐性腸内細菌目細菌(CRE)の分子サーベイランス
Molecular surveillance of carbapenem-resistant Enterobacterales in two nearby tertiary hospitals to identify regional spread of high-risk clones in Germany, 2019–2020 S. Boutin*, S. Welker, M. Gerigk, T. Miethke, K. Heeg, D. Nurjadi *Heidelberg University Hospital, Germany Journal of Hospital Infection (2024) 149, 126-134
背景
カルバペネム耐性腸内細菌目細菌(CRE)の伝播動態を理解することは、世界中で悪化している抗菌薬耐性(AMR)の脅威への対処において、極めて重要である。CRE の病院での伝播は広範囲に研究されてきたが、地域社会での伝播についての情報は不足している。
目的
近隣 の2 つの病院からの CRE のゲノムクラスターを特定すること。それは、地域社会での、または施設間の伝播を示している可能性がある。
方法
2 つの 3 次病院で、2019 年 1 月 1 日から2020 年 12 月 31 日の間に、それぞれの通常の微生物検査室で検出された CRE 分離株を採取し、ショートリードの全ゲノムシークエンシングで特徴を明らかにした。
結果
合計で 272 株の CRE が採取された。エンテロバクター・クロアカエ(Enterobacter cloacae)複合体(71/192、37%)が ハイデルバルグで優勢で、大腸菌(Escherichia coli)(19/80、24%)が マンハイムで優勢であった。最もよく見られるカルバペネム耐性遺伝子である blaOXA-48 は、両方の施設からの CRE 全体の 38%で検出された。伝播クラスターと推定されるものが複数見つかり、それには、E. cloacae 複合体の 6 つのクラスター、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)の 5 つのクラスター、シトロバクター・フレウンディー(Citrobacter freundii)の 4 つのクラスター、大腸菌の 2 つのクラスター、クレブシエラ・アエロゲネス(Klebsiella aerogenes)の 2 つのクラスター等があった。両方の研究施設からの分離株が関与するクラスターは、ST22 C. freundii のクラスターを除けば、なかった。世界中で流行しているクローンが、2 つの施設間で、ST131 大腸菌、ST66 エンテロバクター・ホルメシェイ(Enterobacter hormaechei)、ST22 C. freundii について同定された。
結論
この研究では、両方の施設からの分離株において、広範囲の伝播クラスターは見つからず、クローン構造が病院特異的であることが示唆された。これは、両方の施設を巻き込んだ CRE クラスターが、地域社会で出現したクローン、あるいは流行しているクローンの存在を示している可能性を示唆し、部門間のサーベイランスとデータ共有が必要であることをはっきりと示している。
監訳者コメント:
ドイツ南西部の 2 つの大規模病院における CRE の分子疫学サーベイランスの報告。CRE は過剰な抗菌薬使用や不十分な感染管理に伴って、病院の湿潤環境に存在していたCRE が、患者の消化管に定着し、医療現場を通じて急速に拡散する能力を有しており、日本ではまだ少ないが海外では検出頻度が高くなっており、公衆衛生上の大きな懸念事項となっている。
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