体外式膜型人工肺使用中の院内感染のリスク因子★

2009.11.30

Risk factors for nosocomial infection during extracorporeal membrane oxygenation


M.-S. Hsu*, K.-M. Chiu, Y.-T. Huang, K.-L. Kao, S.-H. Chu, C.-H. Liao
*Far Eastern Memorial Hospital, Taiwan
Journal of Hospital Infection (2009) 73, 210-216
生命維持のために体外式膜型人工肺(ECMO)を使用する患者が増加している。この研究の目的はECMOを使用している成人患者を対象に院内感染症の発生率およびリスク因子を調べることである。2001年から2007年に亜東紀念醫院(Far Eastern Memorial Hospital)で72時間を超えてECMOを使用した成人例の診療録をレビューした。ECMO関連院内感染症の定義は、ECMO開始24時間後からECMO中止48時間後までに発生した感染症とした。ECMOを使用した患者114例中10例(8.77%)に院内感染症エピソード12件が認められた。内訳は、肺炎4件、菌血症3件、手術部位感染症3件、尿路感染症2件であった。ECMO関連院内感染症の発生率は、1,000 ECMO・日あたり11.92件であった。ECMO使用期間および集中治療室(ICU)入室期間は、患者の院内感染症の有無で有意差がみられた(P < 0.001)。ECMOの10日間を超える使用は、院内感染症発生率の有意な上昇と関連していた(P = 0.003)。グラム陰性桿菌は院内感染症の78%に関与していた。単変量解析ではICU入室期間およびECMO使用期間は院内感染症と有意に関連していた。多変量解析ではECMO 使用期間のみが院内感染症と独立して関連していた(P = 0.007)。全体として、この研究で特定されたECMO関連院内感染症の独立リスク因子は、長期間のECMO使用のみであった。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
新型インフルエンザによる重症呼吸不全例の増加を受けて、体外式膜型人工肺(ECMO;extracorporeal membrane oxygenation)が広く注目されている。ECMOとは、呼吸不全に対して膜型人工肺を用いた体外循環による呼吸補助を目的とした装置である。
なお、経皮的心肺補助装置(PCPS;percutaneous cardio-pulmonary support)は、膜型人工肺と遠心ポンプを用いた閉鎖回路による人工心肺であるが、PCPSも呼吸補助を主体に考えればECMOということができる。純粋な呼吸補助を意図してPCPSと区別する場合、v-v ECMOと記載されることもあるようである。
いずれにせよ、侵襲的な医療処置には内在する感染症リスクがあり、曝露期間が長くなればそのリスクは高くなるという認識が重要である。

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