3次紹介教育病院における緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)の疫学
Epidemiology of Pseudomonas aeruginosa in a tertiary referral teaching hospital
R.S. Bradbury*, A.C. Champion, D.W. Reid
*Royal Hobart Hospital, Australia
Journal of Hospital Infection (2009) 73, 151-156
緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)の遺伝子型識別不能株(genotypically indistinguishable strain)※(オーストラリア流行株III;AES III)は、これまではオーストラリアのタスマニア州で嚢胞性線維症の成人患者の一部に認められていた。本研究の目的は、タスマニア州の主要な3次基幹紹介病院におけるこれらの感染源を特定するとともに、嚢胞性線維症患者の肺以外から分離されるかどうかを判定することである。合計120株の緑膿菌分離株を、病院内の臨床サンプルと環境サンプル、および病院周辺環境から採取した。DNA増幅断片多型(RAPD)-PCR法によりこれらの分離株の遺伝子タイピングを行い、Clinical and Laboratory Standards Institute(CLSI;旧NCCLS)法による抗菌感受性試験を行った。RAPD-PCR法で特定した同一遺伝子型の確定検査を、制限酵素SpeIを用いたパルスフィールド・ゲル電気泳動法により行った。AES IIIは、嚢胞性線維症患者の気道分泌物以外のサンプルからは回収されなかった。嚢胞性線維症患者以外に由来する緑膿菌は、ランダム交配集団(panmictic)であることが示され、患者に病院環境株の交差感染または獲得は認められなかった。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
嚢胞性線維症はコーカサス人種に発生する遺伝病であり、我が国ではほとんどみられない。ただし、我が国でみられるびまん性汎細気管支炎は、この類縁疾患であろうとする仮説もある。嚢胞性線維症では多剤耐性緑膿菌感染が問題となっているが、これは抗菌薬による治療歴の影響であるのか、病院環境中のリザーバからの交差感染であるかの議論がいまだに決着していない。今回の論文では、環境由来の株には遺伝的多様性があることから、後者を支持するデータは認められなかったと報告している。
監訳者注:
※遺伝子型識別不能株(genotypically indistinguishable strain):緑膿菌はPCRベースのタイピング法では識別能力が技術的に低いので、たとえ同じ遺伝型を示していても同一の菌株であるか否かは不明であるために、indistinguishable(識別不能)として取り扱っている。
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