肝切除後の手術部位感染症のリスク因子と予測因子★★
Risk factors and predictors for surgical site infection after hepatic resection
T. Okabayashi*, I. Nishimori, K. Yamashita, T. Sugimoto, T. Yatabe, H. Maeda, M. Kobayashi, K. Hanazaki
*Kochi Medical School, Japan
Journal of Hospital Infection (2009) 73, 47-53
外科集中治療室では、インスリンによる厳格な血糖管理によって、術後の合併症発生率と死亡率が低下している。この研究の目的は、単一施設における肝切除連続症例を対象として、手術部位感染症(SSI)の予防のためにSSIのリスク因子と予測因子を特定することである。2000年1月から2007年3月に高知大学医学部で肝切除を受けた152例を対象に、SSIと種々の臨床パラメーターとの関連を検討した。これらの患者におけるSSI発生率は14.5%であった。多変量解析により、SSI発生と関連する独立したパラメーターとして以下の4つが特定された。(i)体格指数(BMI)> 23.6 kg/m2、(ii)推定失血量 > 810 mL、(iii)SSIがある臓器・空隙への胆汁漏、および(iv)スライディングスケールによる術後血糖管理。人工膵臓により術後の血糖値が管理されている患者群では、肝切除後のSSIはみられなかった。この研究から、術後血糖管理を行わないと、術後の感染性合併症の発生率が有意に高くなり、入院期間が有意に延長することが明らかになった。肥満、術中推定失血量、肝切除後の胆汁漏もSSIのリスク因子であり、予測価値を有していた。人工膵臓は肝疾患のため肝切除を受けた患者にとって、低血糖を起こさずに術後の厳格な血糖管理を行うことができる安全で有益な装置である。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
SSI予防の観点から周術期血糖管理の重要性が注目されている。この研究は、国内メーカーNIKKISOによるベッドサイド型人工膵臓装置STG-22を利用しており、血糖値の連続測定により正常血糖値領域に血糖管理することから、厳格な術後血糖管理がSSI発生率を低下させることを示している。いわゆる“high-tech竏檀igh-concept”の好例である。
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