クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)のリボタイプ027および106:臨床転帰とリスク因子★

2009.06.30

Clostridium difficile ribotypes 027 and 106: clinical outcomes and risk factors


F. Sundram*, A. Guyot, I. Carboo, S. Green, M. Lilaonitkul, A. Scourfield
*Royal Surrey County Hospital, UK
Journal of Hospital Infection (2009) 72, 111-118
本研究では、イングランド南東部の地区総合病院において、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)関連下痢症発症のリスク因子、固有のリボタイプとの関連、および芽胞による環境汚染について調査した。酵素免疫測定法による便検体からのC. difficileトキシンの検出後、下痢97症例由来のC. difficile分離株のリボタイピングを行った(サザンプトンの英国健康保護局にて実施)。分離株の各種抗菌薬感受性をE-testを用いて調査した。症例の抗菌薬投与歴を評価し、臨床転帰を追跡した。年齢、性別、病棟、入院期間、併存疾患をマッチさせた対照を設定し、リスク因子となる抗菌薬を条件付きロジスティック回帰分析を用いて判定した。シクロセリン-セフォキシチン-卵黄寒天培地により、病棟環境のサンプリングを行った。C. difficile分離株のリボタイプは45%が027、39%が106、10%が001であった。すべてのリボタイプがシプロフロキサシン、エリスロマイシン、およびセフォタキシム耐性であったが、メトロニダゾールおよびバンコマイシン感受性は保持していた。027菌株による粗死亡率(28日以内の死亡)は23%、早期死亡率(72時間以内の死亡)は11%であったが、リボタイプ106ではそれぞれ11%、3%であった。この症例対照研究により、7日を超えるシプロフロキサシン投与が有意なリスク因子であることが判明した(補正オッズ比3.72、95%CI 1.38~10.02、P=0.019)。環境サンプリングにより、室内用便器、差し込み式便器(bedpan shells)などの糞便で汚染された用具に芽胞が認められ、洗浄後も残存することが明らかとなった。シプロフロキサシン投与がC. difficile関連下痢症を助長すると考えられるため、使用は短期間に制限すべきである。交差伝播を予防するためには、臨床用具に用いる洗浄剤は殺芽胞活性を有するものである必要がある。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
C. difficile関連下痢症の小アウトブレイクは日本の医療施設でも報告がみられるが、これほど大きな発生の報告はみられない。その理由として、C. difficileの検査室診断をあまり丁寧に行っていないことが考えられる。北米型の病原性の高いC. difficileの脅威が指摘されて数年になるが、いまだに日本であまり検出されないのは、単に検査室診断をされておらず、ノロウイルス感染症などの感染性胃腸炎として処理されているものも少なくないのではないかと推測する。

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