汎薬剤耐性アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)感染症例1例の入院後の疫学調査★★
Epidemiological investigation after hospitalising a case with pandrug-resistant Acinetobacter baumannii infection
Y.-Y. Chuang*, Y.-C. Huang, C.-H. Lin, L.-H. Su, C.-T. Wu
*Chang Gung Children’s Hospital and Chang Gung Memorial Hospital, Taiwan
Journal of Hospital Infection (2009) 72, 30-35
2000年代前半に台湾で汎薬剤耐性アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)(PDRAB)が出現したが、小児病院(病院A)でこの菌が初めて同定されたのは、患者1例が呼吸器病院(病院B)から移送された2005年3月であった。PDRABは入院時に採取した眼のスワブ標本から回収された。培養結果の判明を受けて、両病院で感染制御予防策に加え疫学調査を実施した。入院患者30例(病院Aの7例と病院Bの23例)、医用機器、および病棟環境から合計212件の標本を採取した。A. baumannii陽性は、病院Aの標本84件中13件(15.5%)、および病院Bの標本128件中23件(18%)であった。このうち、病院Aの患者2例と医用機器から採取した分離株6株、および病院Bの患者3例から採取した5株がPDRABであった。患者1例は両病院に入院しており、それぞれの病院で1株のPDRAB分離株が検出された。A. baumanniiの36分離株には、9のIRS-PCR(infrequent restriction site-polymerase chain reaction)型および12のパルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)型が認められ、6つの抗菌薬耐性型が同定された。1つの主要なIRS-PCR型(4つのPFGE型)に25分離株が属し、汎薬剤耐性(PDRABの11分離株はすべてこの型)または多剤耐性(イミペネムのみに感受性を示す)のいずれかを示した。A. baumanniiは、患者およびその周辺機器から分離される、普遍的な微生物である。両病院にはA. baumanniiの多剤耐性または汎薬剤耐性のクローンが蔓延していた。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
海外では多剤耐性のアシネトバクター・バウマニーが多く検出されており、近隣諸国でも台湾や韓国でその分離頻度が増している。わが国でも今後監視を強化していく必要がある。
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