入院時のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌の保菌率およびクローン構造の国境を超えた比較★

2009.04.30

Cross-border comparison of the admission prevalence and clonal structure of meticillin-resistant Staphylococcus aureus


R. Kock*, L. Brakensiek, A. Mellmann, F. Kipp, M. Henderikx, D. Harmsen, I. Daniels-Haardt, C. von Eiff, K. Becker, M.G.R. Hendrix, A.W. Friedrich
*University Hospital Munster, Germany
Journal of Hospital Infection (2009) 71, 320-326
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の地域内伝播は、診療区域を共有する病院間での患者の転院によって助長されるため、入院時に保菌患者を確実に判定することが極めて重要である。このため、オランダ・ドイツ国境地帯のEUREGIO MRSA-netの病院では、未確認の病院間伝播だけでなく国境を超えた伝播を防ぐために、当該地域のMRSA管理基準の統一化を目指した。そのためには、入院時のMRSA保菌率と、MRSA保菌に関連するリスク因子についての知識を強化することが前提となる。著者らは、EUREGIO MRSA-netに属するドイツの39か所の病院(2006年11月1日から11月30日まで)およびオランダの1か所の病院(2007年7月1日から9月30日まで)の全入院患者に対して、MRSAの鼻腔内スクリーニングを実施した。スクリーニングを行った25,540例のうち、合計390例がMRSA症例と判定された。入院時のMRSA保菌率は、ドイツの国境地域では患者100例あたり1.6例(全黄色ブドウ球菌の6.5%)、オランダの国境地域では0.5例(全黄色ブドウ球菌の1.4%)であった。全体として、黄色ブドウ球菌プロテインA遺伝子(spa)の遺伝子型はt003、t032、およびt011が優勢であった。分離株1株(t044)は、Panton-Valentine型ロイコシジン(PVL)をコードする遺伝子を保有していた。ドイツおよびオランダの当該地域の全MRSA保菌患者のうち、従来の院内感染のリスク因子に基づく評価により同定できたのは、それぞれ79%、67%であった。評価したリスク因子が全く認められない患者では、優勢なspa型はt011およびt034であった(P<0.001)。
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監訳者コメント:
ヨーロッパでは隣接する国同士で、耐性菌を取り巻く環境が異なる。物流・交通がボーダレスな今、こうした国境を越えた連携が耐性菌征圧には必要である。

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*Royal Melbourne Hospital, Australia

Journal of Hospital Infection (2021) 116, 47-52


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