リアルタイムPCRによる病院環境サンプルからのクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)の定量的検出★
Quantitative detection of Clostridium difficile in hospital environmental samples by real-time polymerase chain reaction
R. Mutters*, C. Nonnenmacher, C. Susin, U. Albrecht, R. Kropatsch, S. Schumacher
*Philipps University Marburg, Germany
Journal of Hospital Infection (2009) 71, 43-48
クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)関連下痢症は病院内で頻繁に発生しており、疾患と死亡の重大な原因となっている。病院内の環境表面は院内病原菌で汚染されていることが多く、特に堅固なグラム陽性菌や芽胞形成菌が含まれる場合は交差伝播の原因となり得る。この研究の目的は、C. difficile陽性および陰性患者の周辺の病院環境において、リアルタイムPCR定量法によりC. difficileを定量することである。臨床環境から合計531件のサンプルを採取して、患者と病棟におけるC. difficileの状態(陽性・陰性)に従って3群に分類した。予期されたように、陽性患者周辺の床および隣接環境には、有意に多数のC. difficileが認められた。しかし、C. difficile陽性患者がいない病棟においても、床のC. difficile数と患者および医療従事者の手指のC. difficile数との間に有意な相関が認められた。このことから、患者および医療従事者の無症候性の保菌も、病院内のC. difficile伝播に寄与している可能性が示唆される。結論として、C. difficileは人的な接触および病院環境内の汚染区域を介して伝播する可能性がある。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
抗菌療法関連下痢症の起因菌として臨床的に最も重要なC. difficileを取り上げている。C. difficileは偏性嫌気性菌でありながら芽胞を産生することから、環境を介して水平伝播することとなり、病院感染制御の観点からは最も対応が難しい病原体の1つである。この論文はC. difficile関連下痢症と呼んでいるが、C. difficileは偽膜性大腸炎のような激しい病態から軽症の下痢、さらに下痢を伴わないイレウスや中毒性巨大結腸症から大腸穿孔、原因不明の白血球数増加などの多彩な病態を呈することから、最近ではC. difficile関連疾患という用語が多く用いられるようになっている。芽胞産生菌であるためにアルコール抵抗性を示し、流水と石けんによる手洗いが必要となる。入院患者の下痢に対応する際には、常に流水と石けんによる手洗いが必要である。
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