クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)の時空間確率論モデリング★★

2009.01.31

Spatio-temporal stochastic modelling of Clostridium difficile


J.M. Starr*, A. Campbell, E. Renshaw, I.R. Poxton, G.J. Gibson
*University of Edinburgh, UK
Journal of Hospital Infection (2009) 71, 49-56
クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)関連下痢症(CDAD)の発生様式は散発性、または小規模の限定的なアウトブレイクである。確率論モデルは病院感染制御戦略へ情報を追加するのに有用であると考えられる。データ補完を用いたベイズ法およびマルコフ連鎖モンテカルロ法をCDADの時空間モデルに適用した。2か所の高齢者向け30床の内科病棟において17か月間にわたり収集した観察データに対して、モデルに基づいたシミュレーションの検証を行った。他の患者および環境からのC. difficile伝播率が半減するというシミュレーションにより、CDAD症例数は15%減少した。感受性である患者の割合を2倍にすると、CDADの推定発生数は63%増加した。一方、環境中の細菌数を2倍にしてもほとんど相違は認められず、CDADの発生はわずかに3%増加しただけであった。CDAD症例数を減少させるためには、同一程度の効果量を得ようとする場合、感染に対する患者の感受性を低下させるほうが伝播率を低下させるよりも有効であることが、種々の介入のシミュレーションから示された。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
C. diffcile関連下痢症については前掲の論文への監訳者コメントを参照。
C. diffcile関連疾患では、抗菌療法などの影響でC. diffcileを保菌するようになり、そのC. diffcileが毒素(トキシン)を産生して、かつ、宿主(患者)がこの毒素に対して適切な免疫反応を生じない場合に発症するという複雑な病態を呈するため、理解が難しい。
この論文の結論によれば、抗菌薬適正使用徹底などによりC. diffcileを保菌するリスクを減少させるほうが、医療従事者の感染対策や環境整備よりもより有効であることを示唆しており注目される。引用している論文(Impallomeni M, Galletly NP, Wort SJ, et al. Increased risk of Clostridium difficile diarrhoea in elderly patients receiving cefotaxime. Br Med J 1995; 311: 1345-46)も参照されたい。

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*University of West London, UK

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