新生児集中治療室におけるRSウイルスのアウトブレイク予防のためのパリビズマブと感染制御対策との併用
Experience with the use of palivizumab together with infection control measures to prevent respiratory syncytial virus outbreaks in neonatal intensive care units
H. Kurz*, K. Herbich, O. Janata, W. Sterniste, K. Bauer
*SMZ Ost Danube Hospital, Austria
Journal of Hospital Infection (2008) 70, 246-252
RSウイルスは一般小児病棟では院内アウトブレイクの原因となる頻度が高く、しばしば新生児集中治療室(NICU)でもアウトブレイクを引き起こす。従来の感染制御対策ではRSウイルスの拡散を予防できないことがあり、特に早産児や新生児に重大な疾患をもたらし得る。本稿では、早産児1例からのRSウイルス検出後に、NICUでのアウトブレイクを予防した経験について報告する。初発症例は34日齢の早産児で、感染症の臨床症状を呈し、臨床試料からRSウイルスが検出された。病棟には当時、当該症例を含めて11例の患児が入室していた。RSウイルス陽性患児を隔離し、病棟を閉鎖して感染制御対策を実施した。患児2例は他院に転院した。すべての患児にパリビズマブ15 mg/kgを筋肉内投与したところ、新規の発症はみられなかった。その後の鼻腔分泌液のRSウイルス検査はすべて陰性であった。従来の感染制御対策にパリビズマブを併用することにより、当NICUでのRSウイルス拡散を予防できたと考えられた。NICUでのRSウイルスによるアウトブレイク予防戦略はすべて、ルーチンの感染制御対策の強化を推奨している。パリビズマブの使用に関する推奨事項には、全リスク乳児に対する月1回の予防投与から特定症例のみに対する予防投与まで幅がある。現在、NICUでのパリビズマブの使用に関するガイドライン、またはRSウイルスによるアウトブレイク制御に関するガイドラインは存在しない。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
パリビズマブはわが国の小児医療においても広く採用されている。投与は一定の条件を満たした乳幼児にのみ認められている。日本では2002年から承認・市販されている(商品名:シナジス)。在胎期間28週以下の早産で12か月齢以下の新生児・乳児、在胎期間29~35週の早産で6か月齢以下の新生児・乳児、および過去6か月以内に気管支肺異形成症(BPD:broncho-pulmonary dysplasia)の治療を受けた24か月齢以下の新生児・乳児・幼児に対して、RSウイルス感染による重篤な下気道疾患の発症抑制のために用いられる。用法としては、RSウイルス流行期を通して月1回のペースで筋肉注射する。なお、2005年10月に効能・効果が追加され、24か月齢以下の血行動態に異常のある先天性心疾患(CHD)の新生児・乳児・幼児に対しても、RSウイルス感染による重篤な下気道疾患の発症抑制のために用いられるようになっている。
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