病棟獲得メチシリン耐性黄色ブドウ球菌の減少を目的とした統計的工程管理チャートおよび構造化診断ツールの多施設無作為化対照試験の結果:CHARTプロジェクト★

2008.10.31

Results of a multicentre randomised controlled trial of statistical process control charts and structured diagnostic tools to reduce ward-acquired meticillin-resistant Staphylococcus aureus: the CHART Project


E. Curran*, P. Harper, H. Loveday, H. Gilmour, S. Jones, J. Benneyan, J. Hood, R. Pratt
*Health Protection Scotland, UK
Journal of Hospital Infection (2008) 70, 127-135
統計的工程管理(SPC)チャートは、感染制御の質の向上を目的として以前から奨励されてきた。その有効性を判定するために多施設無作為化対照試験を実施し、感染制御看護師(ICN)から医療従事者に対して病棟獲得メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)保菌率および感染率のSPCによるフィードバックを毎月行うことにより、発生率が低下するかどうかを調べた。英国の24病院の75病棟を以下の3群に無作為化した。(1)SPCチャートのフィードバックを受けている病棟、(2)SPCチャートのフィードバックに構造化診断ツールを組み合わせた病棟、(3)いずれのタイプのフィードバックも受けていない対照病棟。病棟獲得MRSA感染に関する介入前25か月間のデータを、介入後24か月間のデータと比較した。3群すべてで、病棟獲得MRSA保菌・感染率が統計学的に有意かつ持続的に減少した(P<0.001、P=0.015、P<0.001)。平均減少率は、SPCフィードバックを受けている病棟で32.3%、SPCと診断法のフィードバックを受けている病棟で19.6%、対照病棟で23.1%であったが、対照群と介入群に有意差は認められなかった(P=0.23)。介入後は、対照群で「管理限界を超える」エピソードが有意に多くみられた(平均値は対照病棟0.60、SPC病棟0.28、SPC+診断法の病棟0.28、P=0.021)。参加施設はSPCチャートを有効なコミュニケーションツールであり病棟獲得MRSAのデータの伝達に有用であるとしている。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
SPCチャートによるサーベイランスデータのフィードバックは、日本でも少しずつ普及してきている。その効果について本論文で検討したが、SPCを使用しない群においても病棟獲得MRSAの率が低下してきており、限定的と解釈するのが妥当である。しかし無駄ではなく、またデータの解釈がより容易に行えることから、本法によるフィードバックが推奨される。

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