気管支鏡の消毒のためのエビデンスに基づく抗菌活性スペクトル★
Evidence-based spectrum of antimicrobial activity for disinfection of bronchoscopes
Constanze Wendt*, Birgit Kampf
*University of Heidelberg, Germany
Journal of Hospital Infection (2008) 70 (S1), 60-68
ヒトの体に対する検査後の気管支鏡の処理は、気管支鏡を汚染した可能性があり、次に検査を受ける患者に有害となる可能性があるすべての微生物を除去しなければならない。本解析の目的は、検査中に気管支鏡を汚染して他の患者に疾患を引き起こす可能性がある微生物を明らかにすることである。
方法:文献検索および検査データの解析。
結果:気管支鏡は気道を通過する際に口腔、鼻咽頭、気管、気管支、および肺組織の生理学的微生物叢により汚染されると考えられる。口腔、鼻咽頭、および咽頭は極めて多様な細菌の生息場所であるのに対し、下気道には微生物はほとんど存在しない。しかし、人工呼吸器を装着した患者では繊毛上皮の洗浄機能を横から通り抜けてしまうため、気管および気管支が保菌状態になり得る。さらに、免疫不全患者や、本来は健常である人に気管支炎や肺炎を引き起こし得るあらゆる微生物が、気管支鏡の汚染源となる可能性がある。このような微生物には、細菌、マイコバクテリア、酵母・カビ、エンベロープウイルスと非エンベロープウイルス、およびまれであるが寄生虫がある。
気管支鏡の使用により上皮が損傷を受け、その結果出血を来すことがある。したがって、HIVやHBVなどのすべての血液媒介性病原体も気管支鏡の汚染物となる可能性がある。
気管支鏡の不完全または誤った洗浄・消毒に起因する微生物伝播の報告はいくつかある。このような事例には、寄生虫やウイルスを除くほとんどすべての微生物種が含まれる。しかし、ウイルスは潜伏期間が長いため、気管支鏡と感染との関連は明確ではない。
内生胞子形成菌と寄生虫は気道の常在微生物叢に含まれず、疾患を引き起こすことはまれであり、通常は重度の免疫不全患者のみで疾患の原因となるが、気管支鏡がこのような微生物を伝播したとする報告はない。
結論:内視鏡に対する化学的消毒などの消毒処理の抗微生物活性の対象としては、細菌、真菌、およびウイルスを含める必要がある。殺芽胞活性は、炭疽病が疑われる患者に対する気管支鏡検査後、または重度の免疫不全患者の検査前など、特定の患者集団の場合のみ必要となる。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
気管支鏡の洗浄消毒に関する総説。新たな所見を述べるものではないが、近年の多くの論文をレビューしており、一読の価値はある。
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