新生児室におけるエンテロバクター・クロアカエ(Enterobacter cloacae)アウトブレイクの調査と文献レビュー

2008.09.30

Investigation of an outbreak of Enterobacter cloacae in a neonatal unit and review of the literature


M. Dalben*, G. Varkulja, M. Basso, V.L.J. Krebs, M.A. Gibelli, I. van der Heijden, F. Rossi, G. Duboc, A.S. Levin, S.F. Costa
*University of Sao Paulo, Brazil
Journal of Hospital Infection (2008) 70, 7-14
新生児室の重要な新興病原体であるエンテロバクター・クロアカエ(Enterobacter cloacae)による感染のアウトブレイクが複数報告されている。本研究の目的は、新生児室におけるE. cloacaeによる敗血症のアウトブレイクの調査、および関連文献のレビューである。後向きコホート研究により、新生児集中治療室(NICU)の症例患児と、48時間以上入室した全新生児を比較した。感染患児のコホーティングと業務の再編を行った。パルスフィールド・ゲル電気泳動法(PFGE)を実施した。2006年4月にNICUに入室していた症例患児6例と対照患児13例を、後向きコホートの対象とした。単変量解析により、ドブタミン投与と感染との間に有意な関連があること(P=0.036)、および経腸栄養は防御因子であること(P=0.02)が示された。多変量解析では、独立した危険因子は見いだされなかった。2006年3月の病床利用率は109.6%で、過密状態にあった。PFGEパターンからは、全6例の新生児の分離株は識別不能であった。1983年1月1日から2008年1月15日の期間を対象として、検索語として「E. cloacae」、「outbreak(アウトブレイク)」、「clusters(クラスター)」に「neonate(新生児)」、「newborn(新生児)」、「infant(乳児)」を組み合わせて、PubMedとOvidの検索を行った。新生児のE. cloacaeアウトブレイクに関する26報の論文を見いだし、このうち16報(52%)は血流感染のアウトブレイクのもの、さらにこの中の2報(12.5%)は薬剤の反復投与に関するものであった。著者らの病院のアウトブレイクの感染源を特定することはできなかった。手指衛生の強化、新規入院の制限、および薬剤の単回投与の導入により、アウトブレイクの制御が可能となった。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
Enterobacter cloacaeは欧米のNICUではかなり問題視されている病原体である。わが国でのアウトブレイク事例は少ないが、今後着目していく必要があろう。本論文ではアウトブレイクの事例紹介と文献調査による考察が記載されている。

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