表面におけるエンベロープウイルスおよび非エンベロープウイルスの生存と他の微生物との比較、および不十分な濃度の消毒薬への曝露の影響★
Survival of enveloped and non-enveloped viruses on surfaces compared with other micro-organisms and impact of suboptimal disinfectant exposure
R. Howie*, M.J. Alfa, K. Coombs
*University of Manitoba, Canada
Journal of Hospital Infection (2008) 69, 368-376
ポリ塩化ビニル製の試験用キャリアの表面上で、有機基質存在下または非存在下で乾燥させたエンベロープウイルスおよび非エンベロープウイルスの生存を、細菌、酵母、およびマイコバクテリアと比較した。グルタルアルデヒドおよびAccelerated Hydrogen Peroxide※による消毒の効果を検討した。非エンベロープウイルスであるレオウイルスの生存は持続し、30日後の減少係数※※は2であったのに対し、同期間のエンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)の減少係数は4であった。その他の試験微生物[シンドビスウイルス、緑膿菌、マイコバクテリウム・ケロナエ(Mycobacterium chelonae)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)]の生存にはばらつきがあったが、30日間にわたり生存したものはなかった。グルタルアルデヒドおよびAccelerated Hydrogen Peroxideは、製造者が推奨する高水準消毒のための希釈濃度で効果を示した。しかし、M. chelonaeのグルタルアルデヒド耐性株を除去できたのは7%Accelerated Hydrogen Peroxideのみであった。すべての試験微生物に対して生存のブレイクスルーがみられた消毒薬の濃度は、グルタルアルデヒド0.1%、Accelerated Hydrogen Peroxide 0.05%であった。これらのデータは、病原体の伝播を予防するためには、院内の効果的な洗浄および消毒が必要であることを示している。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
病原体により環境中の残存期間が異なることを明確に示した論文。知見そのものはさほど新しくはないと思われるが、消毒薬の効果とともに見ており、結果がわかりやすくなっている。
監訳者注:
※Accelerated Hydrogen Peroxide:カナダのVirox Technologies社製の消毒薬。過酸化水素をベースに界面活性剤などを含む。
※※減少係数(reduction factor):log10RB-log10Tで算出される消毒薬の効果の指標。RB:消毒薬を使用しない対照群の生存微生物数、T:消毒薬処理後の生存微生物数。
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