ロウベリーレクチャー2007(Lowbury Lecture 2007):発展途上国における結核の感染予防および感染制御の戦略―アフリカからの教訓★★
Lowbury Lecture 2007: infection prevention and control strategies for tuberculosis in developing countries – lessons learnt from Africa
S. Mehtar*
*Stellenbosch University and Tygerberg Hospital, South Africa
Journal of Hospital Infection (2008) 69, 321-327
世界保健機関(WHO)は、南アフリカ共和国を結核最流行国の上位10か国の中に位置づけている。同国で結核の罹患率が最も高いのは西ケープ州である。Tygerberg Hospitalおよびクワズール・ナタール州の医療施設で実施された調査からは、結核の院内伝播リスクが著しく高いことが示されている。感染予防・感染制御プログラムの提供に関する監査により、防御服は十分に支給されているものの、感染予防・感染制御の原則に関する医療従事者のトレーニングと理解が最も必要とされていることが明らかとなった。南アフリカ共和国の結核感染予防・感染制御の全国共通ガイドラインを作成する過程で、その多くは先進国の既存のガイドラインに由来するものであることが判明した。これらのガイドラインの原則は適切なものであるが、発展途上国の経済状態で実施するには現実的とはいえず、医療施設でもあまり実施されていなかった。強固な結核管理プログラムに影響を及ぼす因子は、貧困、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症の併発、過密状態、結核の認識不足、および医療提供レベルのばらつきである。適切な知識基盤を築き、その上に立って正しい感染予防・感染制御の原則の枠組みの中で最良の実践を確立することが推奨される。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
感染制御の原則は、万国共通で普遍的なものであるが、実践に落とし込んで徹底を図るには、頭でっかちではいけない。実践しようとする場所を取り巻く様々な因子の影響を考慮し、その場所に合った最適なベストプラクティスを探ることが重要である。
Prof. Lowburyは、臨床微生物学者であり、詩人であり、哲学者であり、また英国における近代感染制御の父でもある。毎年開催されるHospital Infection Society総会の基調講演は、長年の功績を讃えるために彼の名前が冠されており、最も目覚しい活躍をした人材を招いて受賞講演を行っている。受賞者には彼の詩集とともに記念の盾が贈られる。東アジアでは、1998年に順天堂大学の平松啓一教授が受賞している。
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