フィンランドの急性期病院における医療関連感染症:2005年の有病率全国調査★

2008.07.31

Healthcare-associated infections in Finnish acute care hospitals: a national prevalence survey, 2005


O. Lyytikainen*, M. Kanerva, N. Agthe, T. Mottonen, P. Ruutu, the Finnish Prevalence Survey Study Group
*National Public Health Institute, Finland
Journal of Hospital Infection (2008) 69, 288-294
フィンランドにおける初の医療関連感染症有病率の全国調査の目的は、医療関連感染症の規模、各種医療関連感染症の分布、原因菌、素因保有率、および抗菌薬使用を評価することである。2005年2月から3月にかけて、国内の三次および二次病院と、国内のその他の急性期病院10か所(全40か所の25%)の合計30の病院で任意調査を実施した。全医療関連感染症有病率は8.5%(8,234例中703例)であった。最も頻度の高い医療関連感染症は手術部位感染症(29%)で、次いで尿路感染症(19%)、原発性血流感染症または臨床的敗血症(17%)であった。医療関連感染症有病率は男性、集中治療室入室患者、および外科患者で高く、年齢および基礎疾患の重症度に従って上昇した。医療関連感染症患者の56%(703例中398例)で原因菌を同定し、頻度が高いものは大腸菌(13%)、黄色ブドウ球菌(10%)、エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)(9%)であった。多剤耐性菌による医療関連感染症はまれであった(6例)。多剤耐性菌を保菌していたために接触隔離下で治療された患者は合計122例であった。調査時点では、患者の19%に尿路カテーテル、6%に中心静脈カテーテルを留置しており、1%に人工呼吸器を装着していた。また、抗菌薬治療は患者の39%で実施していた。今回の結果は、感染制御対策の優先順位の決定、およびより詳細な医療関連感染症発生率サーベイランスの立案に利用可能であると考えられる。本調査は、参加病院の医療関連感染症への意識を高め、医療関連感染症の診断にあたる感染制御担当職員を訓練するうえで有用な手段であった。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
北欧諸国ではこれまでは多剤耐性菌感染症が少なく、注目に値する。最近は多剤耐性菌感染症が増加傾向にあり、少ない中での増加している背景がこれらの資料から読み取れれば、我が国の感染対策にも寄与できるであろう。

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