患者ケアにおける手指衛生遵守の改善のための介入★★
Interventions to improve hand hygiene compliance in patient care
D.J. Gould*, N.S. Drey, D. Moralejo, J. Grimshaw, J. Chudleigh
*City University, UK
Journal of Hospital Infection (2008) 68, 193-202
医療関連感染は罹患および死亡の主な原因の1つである。その予防には手指衛生が最も効果的な方法とされているが、医療従事者による実践は不十分である。この報告は、短期的および長期的な手指衛生遵守の改善のための介入の効果を検討した研究を特定して、手指衛生遵守の改善の成功と、その後の医療関連感染発生率への影響を評価したシステマティックレビューである。コクランEPOC(Cochrane Effective Practice and Organisation of Care Group)レビューで採用されている選択基準を用いて、研究論文48件と学位論文1件を特定したが、厳密な選択基準を満たしたのは2件のみであった。全体的に研究は小規模で対照比較が不十分であり、追跡調査データの収集が早期に中断されているために長期的な効果が確認できていない。さらに、観察された変化が介入に基づくものであるとするには、デザインの頑健性が不十分であった。これらの研究では理論的な焦点が欠如しており、介入の詳細、管理プロセスの変更、または介入の成功や失敗の説明のために必要となる施設の状況の詳細な情報が十分に記述されているものはほとんどなかった。このレビューの結論として、手指衛生遵守の向上のための介入の影響を評価する最も厳格なアプローチは断続的な時系列的研究であると考える。このような研究デザインでは、医療関連感染の新規症例数を評価項目とすべきであり、データ収集には季節性の変動を考慮して、介入の12カ月以上前および後の時点に行うべきである。また、経年変化の影響を考慮するためには、国および地域レベルの背景因子を慎重に提示する必要がある。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
手指衛生遵守に関して最も有名な論文はジュネーブ大学から発表された“Pittet D, Hugonnet S, Mourouga P, et al. Effectiveness of a hospital-wide programme to improve compliance with hand hygiene. Lancet 2000;356:1307-1312”であるが、コクランEPOCレビューの基準を満たすのは“Gould DJ, Chamberlain A. The use of a ward-based educational package to enhance nurses’ compliance with infection control procedures. J Clin Nurs 1997;6:55-67”と“Huang J, Jiang D, Wang X. Changing knowledge, behavior and practice related to universal precautions among hospital nurses in China. J Contin Educ Nurs 2002;35:217-224”の2論文のみであるとされた。
手指衛生が最も有効で基本的な感染対策の手段であることは疑う余地がないと信じたいが、実際には科学的な観点からエビデンスを確立するのは困難であると認めざるを得ない。ま、フナ釣りが上手い釣り人こそが名人である。
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