医師の手洗い:患児の保護者は何を望んでいるか?★★
Physician handwashing: what do parents want?
M.J. Stoner*, D.M. Cohen, S. Fernandez, B.K. Bonsu
*Children’s Hospital, Columbus, USA
Journal of Hospital Infection (2007) 65, 112-116
医療従事者の手指から患者への微生物伝播は、医療関連感染の主要な原因の1つである。米国疾病対策センター(CDC)は2002年、患者訪問時の手指消毒用の擦式アルコール製剤に対する勧告を含む、医療従事者を対象としたガイドラインを発表した。今回の前向き研究では、救急医の手指衛生行動に対する親および医療従事者の好みを調査した。本研究の対象は、当院の救急診療部を受診した病気あるいは受傷した小児の親99名および救急診療部の医療提供者100名(看護師64名、医師29名、ナースプラクティショナー※7名)であった。患児の保護者および医療従事者は、アルコール擦式洗浄よりも石けんと水を使う手指消毒を明確に、同程度に好んだ。さらに、両群とも診察前後の手指衛生が好ましいとし、医師の手指衛生行動を観察することを望んだ。結論として、手指衛生に対する家族と医療従事者の好みは、CDCが発表した勧告とは一致しない。CDCのガイドラインを普及させ、手指消毒に関するエビデンスに基づく勧告の遵守を促進するために、教育的介入が必要である。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
CDCの手指衛生に関するガイドラインでは、石けんと流水による手指消毒よりもアルコール製剤による擦式手指消毒を上位に推奨している。しかし、今回調査した小児の親約100名のほとんどが、医療従事者には石けんと流水による手指消毒をして欲しい、と考えているようである。一般の人々にはアルコール製剤に関する教育が必要であることを浮き彫りにした興味深い論文である。
監訳者注:
※ナースプラクティショナー(nurse practitioner):米国における看護師の上級資格で、一定の臨床経験を有し、高度な教育(おおむね大学院修士以上)を修めた者が試験に合格すると、その資格を得ることができる。制度の詳細は州ごとに異なるが、特定の状態に対する診察、検査の指示、治療、処方などが認められている。
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