Ankara Training and Research Hospitalにおける5年間の院内感染サーベイランス★

2006.12.25

Five-year surveillance of nosocomial infections in Ankara Training and Research Hospital


F.S. Erdinc*, M.A. Yetkin, C. Ataman Hatipoglu, M. Yucel, A.E. Karakoc, M.A. Cevik, N. Tulek
*Ankara Training and Research Hospital, Turkey
Journal of Hospital Infection (2006) 64, 391-396
本研究の目的は、530床の病院の5年間にわたる院内感染発生率、院内感染起因病原体の頻度、および抗菌薬感受性の変化を評価することである。1999年から2003年に全病院的な検査室ベースの院内感染サーベイランスを前向きに実施した。院内感染および院内手術部位感染は米国疾病対策センター(CDC)の定義を用い、院内感染発生率は1年間の入院患者数あたりの院内感染発生件数から算出した。院内感染発生率は1.4%~2.4%の範囲であった。神経科、脳神経外科、小児科、および皮膚科で高い発生率が認められた。全体の院内感染発生率が低いのは、用いたサーベイランス法によると考えられる。最も高頻度で認められた感染は、尿路、手術部位、および原発性血流感染で、最も高頻度で分離された病原菌は、大腸菌、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、Enterococcus属、および黄色ブドウ球菌であった。腸内細菌科に最も有効な薬剤はカルバペネム系薬であった。黄色ブドウ球菌分離株のメチシリン耐性率は50%未満で、黄色ブドウ球菌およびEnterococcus属の分離株は、2003年に同定されたグリコペプチド薬耐性Enterococcus faecium分離株1株を除いてすべてグリコペプチド薬感受性であった。同じ方法で得られたデータは年毎の比較が可能であり、最近の変化を検出するのに役立った。院内感染起因病原体に関する抗菌薬感受性データは、院内感染の経験的な抗菌薬療法の有用な手引きとなった。
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監訳者コメント:
本論文で紹介されている院内感染サーベイランスは、臨床検体分離菌情報に基づいて病棟ラウンドにより症例を確定している。このようなサーベイランスを全病院的に行うことは、相当なマンパワーを必要とする割には効果が少なく有用性がないと考えられており、アメリカのNNISシステムではすでに廃止されている。この報告にみられる全病院的サーベイランスは、臨床検体分離菌とその抗菌薬感受性の情報のみに留めて収集し解析することが現実的である。要約の最後の文に述べられている通り、本サーベイランスの有用性は病院感染に対する経験的な抗菌薬療法に対する貴重な手引きとなる点であり、それ以上の有用性は少ないと考えられる。

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