シプロフロキサシン使用の減少が、第3次病院の各部門におけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌分離率に及ぼす効果★
Effect of reduction in ciprofloxacin use on prevalence of meticillin-resistant Staphylococcus aureus rates within individual units of a tertiary care hospital
P.P. Cook*, P. Catrou, M. Gooch, D. Holbert
*East Carolina University, USA
Journal of Hospital Infection (2006) 64, 348-351
過去の研究で病院内でのフルオロキノロン使用とメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の分離率は相関することが示されている。本研究では、第3次教育病院の各成人診療部門において、シプロフロキサシン使用減少プログラム実施後のMRSA感染率に対する効果を検討した。2004年1月1日から2005年12月31日の期間に、すべての成人入院部門で黄色ブドウ球菌陽性の臨床検体を特定した。1年あたり10件を超える黄色ブドウ球菌分離株が検出された部門を解析の対象とした。同じ期間の各部門ごとに、シプロフロキサシンの使用量は、1,000患者・日あたりの1日規定用量(DDD)の単位を用いて決定した。2004年から2005年の間のシプロフロキサシンの使用とMRSA感染率を比較した。対象とした17部門では、シプロフロキサシンの使用は期間中に31.2%減少した(P<0.0001)。これらの部門におけるMRSA感染率は59.6%から54.2%に減少した(P=0.122)。これらの部門間では、シプロフロキサシンの使用とMRSA感染率の相関が認められた(r=0.70、95%信頼区間-0.01~0.94、P=0.053)。この効果は、各部門間でばらつきがあった。7部門では、シプロフロキサシンの使用が減少したにもかかわらずMRSA感染率が上昇したが、これは他の因子(入院期間、感染制御、市中獲得MRSAなど)が寄与したことを示唆している。MRSA高感染率には多くの因子が関与しているが、シプロフロキサシンの使用は寄与因子であると考えられる。シプロフロキサシンの使用の減少は、病院環境でのMRSA制御対策の1つといえるかもしれない。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
シプロフロキサシンの投与により、MRSAの分離率が上昇するエビデンスは、過去の論文でも数多く示されている。曝露されたブドウ球菌は、一種のSOS反応としてフィブロネクチンの産生が増加し菌体表面の粘着性が増加するので、伝達能力が上昇するのが一因と考えられている。この論文でも17部署で正の相関がみられたものの、逆に7部門では負の相関がみられた。この理由については、様々な交絡因子が影響したものと考察されているが、やはりロジスティック回帰分析などを用いて、独立した危険因子を検討していないがために、結論では‘may be’と一段弱い表現になってしまっている。惜しい。
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