プリオン不活化の定量的評価による高圧蒸気滅菌と化学的滅菌剤の比較:検査の標準化に向けた提案★
Quantitative evaluation of prion inactivation comparing steam sterilization and chemical sterilants: proposed method for test standardization
C. Vadrot*, J.-C. Darbord
*Paris V University, France
Journal of Hospital Infection (2006) 64, 143-148
プリオンの不活化が極めて困難であることは周知のとおりである。変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)の伝播事故を予防するため、再使用可能な医療器具に対する様々な汚染除去処置法が、リスク国の専門家により改変されてきた。ヒトの組織では、vCJD因子の分布は広範にわたるため、他の滅菌・消毒法(欧州標準化委員会;European Committee for Standardization)と同じく、プリオン汚染除去の実践方法の標準化が早急に求められている。本稿では、定量的マウスモデルを使用して、感染率低下および潜伏期延長の観察、および同時に実施した化学滅菌剤で固定した蛋白質を対照とした観察を組み合わせる方法を提案する。実用化の観点から、134℃ 18分間または121℃ 30分間の高圧蒸気滅菌と、1 Nの水酸化ナトリウムに15分間曝露することで、感染性の伝播が少なくとも106分の1に減少した。この方法により、部分的有効を確認することも可能であり、特にグルタルアルデヒドや過酢酸溶液などの液体低温滅菌剤で有効である。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
プリオンの不活化は、完全にはできないものという常識を、今一度再認識していただきたい。たとえ106分の1まで活性が低下しても、107以上のプリオンが付着していれば依然として感染性は残存していることに注意してほしい。本邦のある学会が、暫定的な措置として高圧蒸気滅菌を134℃ 18分間とすることを推奨したが、現場ではこれで解決したと誤解されていることを伝聞することが多い。感染制御に携わる方は、細心の注意を払い、もっとも安全な方法を合理的な判断で選び取っていただきたい。
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