神経外科集中治療室における病院感染サーベイランス
Hospital-acquired infection surveillance in a neurosurgical intensive care unit
G.B. Orsi*, L. Scorzolini, C. Franchi, V. Mondillo, G. Rosa, M. Venditti
*University ‘La Sapienza’ Rome, Italy
Journal of Hospital Infection (2006) 64, 23-29
イタリアのローマにある教育病院の8床の神経外科集中治療室(NSICU)で、病院感染に関する前向き研究を実施した。2002年1月から2004年12月にかけて48時間以上入院した全患者を対象とした。人口統計学的特性、患者の出身地、診断、重症度スコア、基礎疾患、侵襲的手技、病院感染、分離微生物、および抗生物質感受性に関する全患者のデータを感染制御チームが収集した。全体で、323例が対象となった。平均年齢は55.5歳(範囲17~91歳)、米国麻酔学会スコア(ASAスコア)平均値は2.88であった。NSICUで70例(21.7%)に132件の病院感染が発現し、内訳は肺炎43例、血流感染40例、尿路感染30例、側脳室ドレナージに伴う髄膜炎10例、および手術部位感染9例であった。手術部位感染率は高値(5.6%)を示したが、3年の間に低下した。デバイス(器材)への曝露1,000日あたり7.2例の血流感染エピソード、人工呼吸器1,000日あたり11.00例の肺炎、および導尿カテーテル1,000日あたり4.5例の尿路感染が発症した。側脳室ドレナージを行った患者では、手術部位感染率の相対リスクは11.3[95%信頼区間(CI)4.2~30.6、P<0.01]であった。61例(18.9%)が死亡した。ロジスティック回帰分析により、死亡率は感染[オッズ比(OR)2.28、95%CI 1.11~4.71、P=0.02]および年齢(OR 1.04、95%CI 1.01~1.06、P=0.002)と有意な関連があることが示された。カンジダ属(Candida spp.)は尿路感染の主要な原因であり(40.0%)、血流感染では第三の原因であった(12.7%)。抗生物質耐性病原体には、メチシリン耐性ブドウ球菌属(77.5%)、カルバペネム耐性緑膿菌(36.4%)、基質拡張型βラクタマーゼ産生肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)(75.0%)などがあった。全体の感染率(21.7%)は公表されているデータの範囲内であったが、病院感染による死亡率、患者の疾患重症度の悪化、および多剤耐性菌の出現を考慮すると、感染制御対策を向上させる必要性がある。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
脳神経外科領域の患者の特性上、意識障害やデバイスの長期留置例が多いなどの特徴がある。意識障害と人工呼吸管理により、嚥下性肺炎・人工呼吸器関連肺炎のリスクが上昇する。
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