タイで実施された外科医を対象とした手術部位感染率のフィードバックの影響

2006.06.30

Impact of surgeon-specific feedback on surgical site infection rates in Thailand


N. Kasatpibal*, S. Jamulitrat, V. Chongsuvivatwong, M. Norgaard, H.T. Sorensen, on behalf of the Surgical Site Infection Study Group
*Prince of Songkla University, Thailand
Journal of Hospital Infection (2006) 63, 148-155
タイでは現在、外科医別の手術部位感染率のフィードバックに関するデータは入手できない。外科医へのフィードバックシステムにより手術部位感染率が低下するかを検討するため、著者らはタイの7カ所の病院で外科手術を受けた患者の前後比較試験を行った。6カ月のサーベイランス期間後、外科医に本人の手術部位感染率および標準化感染比(standardized infection ratios;SIRs)を通知した。手術部位感染率は全米病院感染サーベイランス(NNIS)システムの基準を用いて算出し、標準化感染比に関するNNISの報告と比較した。介入前後の標準化感染比を比較するために標準化感染比の比を算出し、外科医個別へのフィードバックの相対的な影響を評価するために、患者の性別、年齢、創汚染の程度、米国麻酔学会スコア(ASAスコア)、手術所要時間、手術の種類、予防的抗生物質投与の使用と期間、および術前入院期間で補正したロジスティック回帰分析を行った。外科医へ非公開のフィードバックを6カ月間実施した後、手術部位感染率と標準化感染比に変化はなかった。介入前の期間の手術部位感染率は、手術100例につき感染が1.7例であり、対応する標準化感染比は0.8であった[95%信頼区間(CI)0.6~0.9]。介入後の期間の手術部位感染率は手術100例につき感染が1.8例であり、対応する標準化感染比は0.8であった(95%CI 0.7~0.9)。標準化感染比の比は1.0であった。外科医へのフィードバック後の手術部位感染の相対リスクから、この介入には効果がなかったことが示唆された(補正相対リスク1.02、95%CI 0.77~1.35)。タイにおいて、外科医への本人の手術部位感染率に関するフィードバックにより、手術部位感染率は減少しなかった。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
減少しなかった理由として、観察期間内ではサンプルサイズが小さすぎたこと、および外科医へのフィードバックに時間がかかったことが挙げられている。これらを解決すれば、あるいは感染率の低下がみられるかもしれない。本邦でも多くの病院でclinical governanceの向上のために、外科医自身が中心となって同様の研究がされるようになることを期待している。

同カテゴリの記事

2019.08.30

Healthcare-associated infections and antimicrobial use in long-term care facilities (HALT3): an overview of the Italian situation

2019.02.22

Intestinal persistence of a plasmid harbouring the OXA-48 carbapenemase gene after hospital discharge

2009.02.28

Meticillin-resistant Staphylococcus aureus contamination of healthcare workers’ uniforms in long-term care facilities

2020.09.30

The economic benefits of surgical site infection prevention in adults: a systematic review
A. McFarland*, J. Reilly, S. Manoukian, H. Mason
*Glasgow Caledonian University, UK
Journal of Hospital Infection (2020) 106, 76-101

JHIサマリー日本語版サイトについて
JHIサマリー日本語版監訳者プロフィール
日本環境感染学会関連用語英和対照表

サイト内検索

レーティング

アーカイブ