整形外科手術における患者側危険因子の変量効果モデル:オランダの院内感染サーベイランスネットワーク「PREZIES」の結果
Random effect modelling of patient-related risk factors in orthopaedic procedures: results from the Dutch nosocomial infection surveillance network ‘PREZIES’
J. Muilwijk*, G.H.I.M. Walenkamp, A. Voss, J.C. Wille, S. van den Hof
*National Institute of Public Health and the Environment, The Netherlands
Journal of Hospital Infection (2006) 62, 319-326
手術部位感染に関するオランダのサーベイランスで、1996~2003年に手術部位感染1,895例を含む整形外科手術70,277例のデータを収集した。本研究の目的は、(1)グラム陽性およびグラム陰性細菌による手術部位感染の傾向を分析し、(2)すべての整形外科手術後の深在性および表在性手術部位感染の患者側危険因子(リスクファクター)を、特に初回人工股関節置換手術に焦点をあてて推定し、(3)感染リスクの病院間に特有の相違を分析することである。変量効果モデルを使用して、手術部位感染発症の患者側危険因子のオッズ比を推定し、さらに各病院で最も一般的な手術部位感染の原因菌種の分布を明らかにした。ブドウ球菌を主としたグラム陽性菌が、整形外科手術後の深在性手術部位感染(84.0%)および表在性手術部位感染(69.1%)の主要な原因であった。人工股関節置換手術後のコアグラーゼ陰性ブドウ球菌による手術部位感染の発生率はサーベイランス期間を通して減少したが、黄色ブドウ球菌の関与は増加した。最も一般的な病原菌種による感染の発生は一時的に増加した。全米病院感染サーベイランスシステム(National Nosocomial Infections Surveillance System)のリスク指標や年齢などの患者側因子は、変量効果モデルの予測力に対してほとんど影響を及ぼさなかった。本研究は、手術部位感染の危険因子に関する多施設試験において、病院間のランダム変動のリスク推定値を補正する変量効果モデルが有用であることを強く示した。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
オランダはMRSA制圧に成功した国として有名である。彼らの戦略は、本論文にみられるように、感染症をデータから科学することである。国家プロジェクトとして、危険因子を見いだし、国策としての感染制御に役立てるという、一研究者では到底遂行できないあっぱれな戦略である。
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