中国広州市の小児患者病室における空中呼吸器ウイルスの検出
Detection of airborne respiratory viruses in paediatric patient rooms in Guangzhou, China Y. Xie*, E.Y.C. Shiu, D. Ye, W. Zhang, W. Huang, Z. Yang, B.J. Cowling, N.H.L. Leung *The University of Hong Kong, Pokfulam, Hong Kong Special Administrative Region of China Journal of Hospital Infection (2026) 173, 21-29
背景
接触および呼吸器飛沫を介した伝播は、ある種の呼吸器ウイルスの拡散に関連することが確立されている。伝播に対する空中ウイルス含有粒子の寄与について、呼吸器ウイルス間の直接比較は限られている。
方法
2017 年 12 月から 2020 年 1 月にかけて、中国広州市にある 3 次病院の 5 床の小児患者病室において空気サンプリングを行った。米国国立労働安全衛生研究所(NIOSH)の 2 段階サイクロンサンプラーを用いて 4 時間にわたり継続的に空気を採取し、逆転写 PCRを用いて呼吸器ウイルス RNA/DNA を定量した。
結果
空気サンプリングを採取機会 44 件について実施し、対象室内で RS ウイルス、アデノウイルス、パラインフルエンザウイルス、およびインフルエンザ A または B ウイルスについて検査陽性であった患者が 1 例以上であった機会が、それぞれ 24、18、16、8、および 4 件認められた。インフルエンザ A ウイルスは、感染患者の存在が知られていない場合でも最も高頻度に検出された(全機会の 72%)。インフルエンザ B ウイルス、アデノウイルスおよび RS ウイルスは低頻度から中頻度で検出され(12 ~ 50%)、パラインフルエンザウイルスの検出は稀であった(8%)。ウイルス量は 103 ~ 105 コピー数/m3 の範囲であり、平均ウイルス量はインフルエンザ A ウイルスが 8,358 コピー数/m3(95%信頼区間[CI]6,368 ~ 10,969)と最も多く、インフルエンザ B ウイルスが 4,658 コピー数/m3(95%CI 2,337 ~ 9,285)、アデノウイルスが 6,013 コピー数/m3(95%CI 2,360 ~ 15,323)、パラインフルエンザウイルスが 1,851 コピー数/m3(95%CI 0 ~ 5.36*1013)、ならびに RS ウイルスが 970 コピー数/m3(95%CI 486 ~ 1,937)であることが示された。
結論
医療従事者および訪問者は、たとえ知られた感染患者がごく近くにいなくても、空中の呼吸器ウイルスに曝露される可能性がある。本研究の結果は、医療環境における普遍的感染制御策を支持しており、これには患者における呼吸器ウイルスサーベイランスの強化、屋内換気の改善および混雑の低減が含まれる。
監訳者コメント:
小児の 5 床室で空気を 4 時間採取した研究で、A 型インフルエンザウイルスおよび B 型インフルエンザウイルス、RSV、アデノウイルスなどの遺伝子が空気中から検出され、しかも同じ病室に該当ウイルス陽性患者が確認されていない場面でも検出された。感染管理上重要なのは、「診断された患者の周囲だけ」を対策すれば十分とは限らないという点である。共有病室では、患者・家族・職員など複数の感染源があり得るため、流行期には患者の呼吸器症状の把握や検査、過密の回避に加え、換気状況を日常的に確認する視点が重要になる。ただし検出したのは PCR による RNA/DNA であり、感染性のあるウイルスや実際の空気感染を証明した研究ではない。また換気回数も採取時に直接測定されていない。個々のウイルスについて直ちに空気予防策を追加する根拠というより、呼吸器ウイルス対策を患者単位だけでなく病室全体の環境対策として考えることを促す研究である。
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