微生物の消毒剤に対する感受性を評価する基準としての複製能力★
Replication capacity as a basis for assessing the sensitivity of micro-organisms to disinfectant agents A. Kramer*, J.K. Knobloch, J. Gebel, K.-M. Roesch, C. Ilschner, N.T. Mutters, M. Exner, B. Hornei, M. Rausch *University Medicine Greifswald, Germany Journal of Hospital Infection (2026) 170, 139-151
背景
消毒薬に対する微生物の抵抗性および耐性についての解釈は、これまで長いこと一致をみておらず、定義は不統一で、臨床的に意味のある閾値はない。われわれは、使用後複製能(RCAU)という概念を、消毒薬曝露後の微生物の生存が、推奨されている使用条件下で臨床的に有効な現象となるか否かを評価するための実用的なエンドポイントとして提案する。RCAU は、推奨される適用濃度および曝露時間での曝露後の、微生物の複製する能力と定義される。RCAU が臨界値に達した場合、標準化された定量的懸濁試験に不合格になる。
方法
ドイツ応用衛生協会のリストに載せられている多く用いられている消毒物質に関する発表済みのエビデンスを再評価した。RCAU の定義に基づいて、生存、抵抗性および耐性に関して報告されている結果について、適用濃度において定量的懸濁試験を用いて試験を実施したかどうかに特に留意して再評価した。
結果
標準的な懸濁試験において、適用条件下で臨界値に達する RCAU を示した消毒薬群はなかった。感受性または微生物の生存の低下の報告は存在するが、その多くは使用濃度における懸濁試験に基づいておらず、RCAU に関する解釈は不確実となっていた。一時的な適応や可逆的な適応が記述されているが、臨界値に達する RCAU に関する所見はなかった。トリクロサンや銀の化合薬のみが確立された耐性機構を示したが、この場合でも標準化された試験による臨界値に達する RCAU の確認は行われていない。
結論
RCAU は、臨界値に達しない生存と臨床的に臨界値に達する耐性発現を識別するための透明性のある、使用条件に基づく枠組みを提供する。様々な消毒薬クラスに適用して、RCAU により使用条件下において臨界値に達する試験不合格は発生しなかったことが示されているが、報告された多くの結果は標準化された懸濁試験により評価されていなかった。
監訳者コメント :
現状では「消毒薬耐性」の定義は統一されておらず、微生物がわずかに生き残ることを耐性とするのか、感受性の低下をもって耐性とするのか、あるいは実際の使用条件下で臨床的に問題となるかどうかで判断するのかについて見解が分かれており、臨床的に意味のある“閾値”は存在していなかった。そこで著者らは、RCAU(使用後複製能)、すなわち「推奨される濃度および曝露時間で消毒薬に曝露された後に、微生物が再び増殖できる能力」という新たな概念を提案している。これは、単に生存の有無ではなく、その後に増殖可能か(すなわち感染につながり得るか)を評価し、臨床的意義に基づいて判断する枠組みである。例えば、100 万個の微生物が消毒薬使用後に 10 個残存した場合、従来は問題ありとみなされることがあったが、RCAU の考え方では、その 10 個が増殖しなければ臨床的には問題なしと判断される。RCAU に基づく評価では、臨床的に問題となる消毒薬耐性は確認されなかった。銀製剤やトリクロサンでは耐性機構の存在が示されているものの、臨床的に問題となる RCAU は確認されていない。
本研究は、「消毒薬はやがて効かなくなる」という議論に対し、適切な使用条件を遵守すれば臨床的に問題となる耐性はほとんど生じない可能性を示した点で、感染対策上重要な示唆を与えるものである。
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