オランダおよびベルギーのナーシングホームにおける環境汚染を評価する:ATP ベースの越境研究★

2026.03.07

Assessing environmental contamination in Dutch and Belgian nursing homes: a cross-border ATP-based study

A. van Arkel*, I. Willemsen, A. Schuermans, C. Wijkmans, W. Dhaeze, C.J.P.A. Hoebe, J. Kluytmans
*Amphia Hospital, The Netherlands

Journal of Hospital Infection (2026) 169, 29-34

背景

ナーシングホームにおける微生物の拡散を低減するためには、清掃の適切な測定評価が必要である。ATP 測定は、汚染の定量において有用なツールとなり得る。

目的

複数のナーシングホームにおいて環境汚染を客観的に測定し、その結果により最も汚染された媒介物を重点的に清掃できるようにする。

方法

ナーシングホーム 28 施設の複数病棟において、標準化された ATP 測定を実施した。病棟ごとに事前に規定した 15 の表面を、3M Clean Trace NG Luminometer により測定した。結果を相対発光量(RLU)で示した。RLU 値 1,000 超の場合に「清潔でない」とみなした。RLU 測定値の違いを、国および媒介物のグループ間で比較した。

結果

計 1,794 回の ATP 測定を実施し、ナーシングホーム 1 施設あたり 28 回から最高 202 回の範囲であった。RLU 中央値は 1,037(範囲:1 ~ 376,880)、測定値の 51.3%は RLU 値 1,000 超であった。国および媒介物のグループ間で有意差が認められた。

結論

ATP 測定値は、ナーシングホームにおける環境汚染のレベルを決定するための客観的アプローチとして利用できる。ATP 値における有意差が、ナーシングホーム間および各国間で認められた。さらに、媒介物のグループ間で顕著な差が認められた。これらの結果は、ナーシングホーム内の清潔度を改善するために利用し得る標的を提供している。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント

環境整備は、過去には肉眼的にホコリがなく、きれいであれば、それで良しとされてきた。しかしながら、耐性菌やノロウイルスなど、乾燥した環境でも感染性を持続する病原体が、感染対策上問題となり、介護施設においても、病院同様に環境整備は重要視されるようになっている。ATP 測定は視覚評価では把握困難な汚染を定量化し、環境整備の重点対象を明確化する有用な手法であるが、微生物汚染そのものを直接反映する指標ではない。すなわち「有機物汚染≠病原体汚染」あることを良く理解しておく必要がある。一般的に測定したATP の数値により汚染度が評価され、1,000 RLU 未満が「清潔」、3,000 以上は「汚染」として判断される。ATP 測定は「絶対的な感染リスク評価」ではないものの、環境整備の評価のひとつの指標として、利用する価値はあるだろう。
※RLU 値とは?:RLU 値とは「Relative Light Unit」の略号で、相対的な光の量を表す。
例えば RLU 値が大きければ ATP 量が多いことを意味し(例:洗い残しが多い)、RLU 値が小さければ ATP 量が少ないということを意味する(洗い残しが少ない)。

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