時空を超えて:総合病院および回復期病院のネットワークにおけるカルバペネム耐性アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)の系統発生解析

2026.02.23

Across time and space: phylogenetic analysis of carbapenem-resistant Acinetobacter baumannii in a network of general and convalescent hospitals

E.T.L. Lui*, C. Li, A.L.H. Lee, D.N. Sapugahawatte, W.S. Lee, G.C.S. Chiu, I.Y.Y. Cheung, V.C.Y. Chow, M. Ip
*Prince of Wales Hospital, Hong Kong Special Administrative Region

Journal of Hospital Infection (2026) 168, 13-22

緒言

カルバペネム耐性アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)(CRAB)は公衆衛生にとって重大な脅威であり、院内アウトブレイクのよくある原因である。

目的

香港の病院ネットワークにおいて、臨床環境と病院環境の両方に由来する CRAB の遺伝疫学を説明する。

方法

2012 年から 2024 年の期間に収集された、患者(N = 143)および院内環境(N = 42)由来の CRAB 株 185 株において、全ゲノムシークエンシングを行い、系統発生的関係、病原性遺伝子、抗菌薬耐性遺伝子、院内アウトブレイクを引き起こした菌株の考えられる系統を検討した。臨床情報と抗菌薬感受性試験報告書を電子カルテから収集した。菌株の時間および空間分布を評価した。

結果

CRAB の優勢な配列型は ST2 であり、分離株 185 株中 137 株(74.1%)を占めた。次いでST195(N = 17、9.2%)、ST49(N = 16、8.6%)が認められた。分離株はすべて、環境中の生存を促進する nreB 遺伝子を有した。病原因子の遺伝子の保有率は、環境分離株とヒト分離株とで全体的に同程度であった。Sulbactam-durlobactam、アミノグリコシド系薬およびマクロライド系薬に対する耐性を付与する抗菌薬耐性遺伝子の保有率は、環境分離株の方が有意に高かった。地域の病院ネットワークにおける時間・空間を超えた CRAB の伝播が認められた。

結論

病院ネットワーク全体の臨床分離株および院内環境分離株において、CRAB では ST2 が最もよくみられる配列型であり、10 年以上にわたる様々な病院における散発例とクラスターを結び付けた。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント

本論文は香港の医療網の解析から、カルバペネム耐性アシネトバクター ST2 株が臨床と環境で優位に定着し、10 年以上に及ぶ施設間伝播の主因であることを示した。本株の環境適応力は潜在的伝播を助長し、単一施設での対応の限界を示す。全ゲノム解析を用いた広域サーベイランスと、ワンヘルスに基づく地域全体の感染管理の統合が急務である。

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*University College London, UK

 

Journal of Hospital Infection (2021) 110, 60-66