肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)のバイオフィルムは内視鏡再処理に適した条件下で過酢酸による消毒に耐性を示す

2026.01.10

Biofilms of Klebsiella pneumoniae are tolerant to disinfection by peracetic acid under conditions relevant for endoscope reprocessing

M. Arvand*, K. Konrat, D. Csertö, A.M. Richter
*Robert Koch Institute, Germany

Journal of Hospital Infection (2026) 167, 116-123

背景

肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)は、医療関連感染症の重大な原因である。カルバペネム耐性肺炎桿菌(CRKP)は、深刻な公衆衛生上の脅威であると考えられ、内視鏡関連アウトブレイクとの関連が強まっている。内視鏡チャネルにおけるバイオフィルム形成は、抗菌薬耐性の増大の一因であり、再処理中の消毒薬の有効性を損なうと考えられる。本研究では、内視鏡再処理において一般的に使用される消毒薬である過酢酸(PAA)について、浮遊型およびバイオフィルム型の肺炎桿菌に対する有効性を評価した。

方法

消毒薬の有効性は、欧州規格(EN)13727 を用いた懸濁試験およびバイオフィルムのビーズアッセイを用いて評価した。内視鏡アウトブレイクに関連した CRKP 2株、カルバペネム感受性臨床株 2 株および ATCC 13883 の計 5 株の肺炎桿菌株を試験した。

結果

懸濁試験ではすべての菌株が PAA に感受性を示し、0.001 ~ 0.01% PAA で 10 分以内に 5 log10 cfu の減少が得られた。一方、バイオフィルムに存在する細胞では、同等の有効性を得るためにより高濃度(0.075 ~ 0.2% PAA、10分)が必要であった。臨床株は ATCC 13883 と比較して耐性が顕著に高かった。標準的な内視鏡再処理条件下(PAA 0.075%、5 分、37°C)では、すべての菌株のバイオフィルムが耐性を示し、5 log10 cfu 減少の閾値に達しなかった。一方、強化された内視鏡再処理条件(0.15% PAA、10 分、37°C)では、良好なバイオフィルム消毒が得られた。

結論

CRKP などの肺炎桿菌のバイオフィルムは、内視鏡再処理に用いられる標準濃度の PAA に対して顕著な耐性を示す。これらのデータから、バイオフィルム形成の可能性が高い場合には、日常的に用いられる消毒条件では十分でない可能性があることが示唆される。内視鏡再処理などのバイオフィルム汚染のリスクが高い領域や、CRKP アウトブレイクの状況においては、消毒パラメータを再検討し、必要に応じて調節すべきである。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント

本論文は、内視鏡再処理において、Klebsiella pneumoniae(特に CRKP)のバイオフィルムに対する過酢酸の消毒効果を検証した研究である。浮遊菌に比べてバイオフィルム内では15 ~ 75 倍の過酢酸濃度を要し、標準的な内視鏡再処理条件(0.075%、5 分、37°C)では十分な除染が達成されなかった。一方、濃度と時間を倍増させた「強化プロトコル」(0.15%、10 分)では有効性が確認された。現行の浮遊菌ベースの検証基準がバイオフィルムの耐性を過小評価している可能性を指摘しており、アウトブレイク時や高リスク症例後にはプロトコルの強化を検討すべきであることを示唆する極めて重要な知見である。

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