アラブ首長国連邦の病院における抗菌薬適正使用支援を最適化する:Emirates Health Services におけるプログラム構造の評価

2025.12.13

Optimizing antibiotic stewardship in United Arab Emirates hospitals: an assessment of programme structure in Emirates Health Services

F. Al Hamidh*, M.H. Rahman, E. Charani
*Hamdan Bin Mohammed Smart University, United Arab Emirates

Journal of Hospital Infection (2025) 166, 161-169

背景

抗菌薬適正使用支援プログラム(ASP)の最適な実行が、アラブ首長国連邦(UAE)を含む湾岸諸国における抗菌薬耐性との闘いには不可欠である。

目的

UAE の病院における ASP の構造を、米国疾病管理予防センター(CDC)および世界保健機関(WHO)によって定義された 7 項目の中核要素について評価した。

方法

Emirates Health Services(EHS)の病院 12 施設において、混合法アプローチとして文書審査、調査および専門家面接を実施した。文書審査は 3 段階リッカート尺度で行った。無作為に抽出された従業員 385 名にオンライン調査を配布し、ASP の普及を 5 段階リッカート尺度で評価し、記述的に、ならびに Mann-Whitney 検定および Kruskal-Wallis 検定によって解析した。プログラム専門家との面接についてはテーマ分析を行った。

結果

文書分析により、ASP の中核要素 7 項目中 6 項目が完全に達成され、アカウンタビリティはすべての病院で部分的に達成されていることが示された。調査(回答率 83%)では、ASP の全要素について部分的な普及(中央値 4、四分位範囲 2)が明らかになり、従業員グループ間および病院間で有意差が認められた(P = 0.032)。12 名の ASP 専門家との面接により、重要なプログラム促進要因は、リーダーシップ、積極的介入、薬剤師の関与、状況に合わせた教育であることが確認された。障壁となるのは、一貫性のない抗菌薬の追跡、医師の抵抗、迅速診断法の欠如、コンピテンシーの枠組み、集団訓練であった。

結論

EHS の ASP は、適切な構造をもつが、その普及には病院間で一貫性がない。UAE で最初のこの混合法研究では、現地の ASP を CDC および WHO の基準に照らして評価した。その結果は高所得国と一致しているが、中東および北アフリカ諸国の実施状況とは異なっていた。ASP の実行と採用の最適化は、処方、費用対効果および臨床転帰に焦点を当てた、プロセスおよび結果の指標データを用いて検討する必要がある。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント

本研究は、UAE(アラブ首長国連邦)の公的医療機関における ASP(抗菌薬適正使用支援プログラム)の構造を、CDC および WHO の基準に照らして多角的に評価した初の混合研究法による報告である。文書上は基盤要素の多くが満たされ、リーダーシップや薬剤師の積極的関与が強みとして確認された一方で、現場スタッフへの浸透や抗菌薬消費量の追跡標準化には課題が残る実態が浮き彫りとなった。高所得国に準じた体制構築が進む一方で、現場の意識向上や迅速診断の導入、IT 活用の強化が今後の鍵となる。ASP の「形式」から「実質的運用」への移行を目指す医療機関にとって、ベンチマークすべき示唆に富む内容である。

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