医療システムにおける抗菌薬耐性の促進因子:英国マージーサイド州の病院および長期ケア施設の感染予防・制御における意義の定性的調査★★

2025.12.13

Health system drivers of antimicrobial resistance: a qualitative exploration of implications for infection prevention and control in hospitals and long-term care facilities in Merseyside

Y. Alhassan*, M. Moore, K.A. Duda, F.E. Graf, S. Todd, J.M. Lewis, N. Feasey , M. Taegtmeyer
*Liverpool School of Tropical Medicine, UK

Journal of Hospital Infection (2025) 166, 12-20

背景

抗菌薬耐性(AMR)の伝播は、医療システム内の複数の因子(その多くはいまだに十分に研究されていないか、十分な取り組みがなされていない)の間の複雑な相互作用により成立する。本研究は、英国マージーサイド州の病院および長期ケア施設(LTCF)の高齢者における、伝播に関する医療システム内の具体的な促進因子を検討した。

方法

複数の病院、LTCF、地域環境および救急医療環境から目的をもって選択した参加者 37 例を対象に、半構造化面接により定性的データを収集した。面接は、世界保健機関の「保険システムを構築する 6 つのビルディングブロック」(World Health Organization Health System Building Blocks Framework)に基づいて実施し、AMR 伝播の経路および促進因子、感染予防・制御(IPC)実践に対する阻害因子、ならびに介入戦略について検討した。主題分析を NVivo 12 を用いて実施した。

結果

認識された伝播においてカギとなる 3 つのポイントが同定された:込み合った病院内での長い待ち時間、施設間の移動、ならびに LTCF および病棟内の共有スペース。AMR に関するシステム内の促進因子として関与するものには、不十分な施設の設備や環境、ケア移行時の断片的な情報共有、スタッフの交代、ならびにトレーニングのギャップなどが含まれた。認識は低かったが重要なリスクには、複数の病棟にまたがる一貫した清掃チームの欠如、具体的なケアの状況に適していない全般的な IPC ガイドライン、ならびに環境衛生に対する脆弱な管理・監督などが含まれた。AMR スクリーニングが問題であることは広く認識されていた一方、その費用効果および臨床的有用性は明らかでなかった。病棟間移動時の際のコミュニケーション不良は、速やかに対応可能な問題として取り上げられたが、環境設備などの欠陥および労働力の不安定は、より持続的なシステム内の課題として提示された。

結論

医療介護環境における AMR への取り組みには、状況に応じた、各種の介護や医療のケアが変化する際の効果的な感染リスクについてのコミュニケーションの優先付けを行う多面的アプローチ、個別化された IPC プロトコール、ならびに安定したスタッフ配置が必要となる。インフラストラクチャー、スクリーニング、および労働力に対する長期の投資が不可欠な一方、低リソースに対する方策、例えばリスク情報システムの改善や状況に応じた IPC ガイドラインなどの方策により速やかな進捗が可能である。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント

AMR 対策は医療施設から介護施設まで切れ目のない、漏れのない連続的なケアが感染拡大を防ぐうえで大切である。本論文ではその感染拡大リスク要因として、①伝播リスクは、病院の混雑、施設間移動時の情報共有不足、介護施設内の共有空間の 3 つの場面、②システムのリスクは、インフラ整備不良、人材不足、コミュニケーション不全、清掃体制、現場に即しない感染対策マニュアル、耐性菌スクリニーニング方法、などが明らかとなった。これらの改善にはインフラ整備、人材確保などの長期的かつ予算措置が必要となる。

しかしながら、①AMR フラッグを電子カルテ上に表示、②現場スタッフを交えた感染対策マニュアルの作成、③固定化した清掃スタッフの体制整備、④チェックリストや確実な伝達形式による情報共有は、優先順位が高く、かつ実効性があり、費用のかからない対策である。

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