鶏が先か卵が先か?カルバペネマーゼ産生腸内細菌目細菌の腸管内保菌における腸内細菌叢のバランス異常(dysbiosis)の役割

2025.10.05

Chicken or egg? The role of dysbiosis in intestinal carriage of carbapenemase-producing Enterobacterales

M.J.S. Knudsen*, F.H. Jensen, I.M.C. Rubin, A.M. Petersen
*Copenhagen University Hospital — Amager and Hvidovre, Denmark

Journal of Hospital Infection (2025) 164, 64-71

背景

カルバペネマーゼ産生腸内細菌目細菌(CPE)は、医療環境において伝播する能力が確立しており、病棟でアウトブレイクを引き起こす。

目的

腸内細菌叢のバランス異常(dysbiosis)が CPE の腸管内保菌と関連するかどうかを検討した。また、抗菌薬治療および研究への組入れ前の入院について調査した。

方法

2024 年 9 月に PubMed、Embase および Cochrane データベースにおいて系統的検索を行い、CPE 保菌者のマイクロバイオーム解析と非保菌者のマイクロバイオーム解析とを比較した研究を組み入れた。

結果

検索の結果、1,812 件の記録が特定された。重複を除外し、タイトルおよびアブストラクトのスクリーニングに基づき不適格な記録を除外した後、67 件の記録を取り出し、フルテキストのスクリーニングを行った。このうち、CPE 保菌者 140 例および対照 141 例を含む、4 件の研究をシステマティックレビューに組み入れた。3 件の研究で、CPE 保菌者群においてバランス異常(dysbiosis)が認められた。4 件目の研究では、CPE 保菌者において健康な成人と比較して多様性の低下が見出されたが、入院中の非保菌者との比較では多様性の低下は認められなかった。

結論

このシステマティックレビューでは、腸内のバランス異常(dysbiosis)と CPE の腸管内保菌との関連が明らかになっている。しかし、抗菌薬治療がこの結果に影響を及ぼした可能性は否定できない。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント

CPE の腸内保菌とディスバイオシス(※腸内細菌叢のバランスが崩れた状態)の関連性を検討した時宜を得たシステマティックレビューである。両者の強い関連性が示されたが、「鶏が先か、卵が先か」という因果関係、特に抗生物質使用という強固な交絡因子の影響については未解明な点が多い。本知見は、標準的な感染制御策に加え、糞便微生物叢移植などマイクロバイオームを標的とした新たな予防・除菌戦略の論理的根拠を支持するものであり、今後の因果関係の解明に向けた前向き研究の必要性を強く示唆している。

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