病院のシンクにおけるバイオフィルムによる細菌の再定着★★

2025.08.10

Bacterial recolonization of hospital sink biofilms

H.G. Healy*, E. Pawluk , L. Dieter, S.C. Roberts, W. Tanner, T. Mathew, D. Peaper, R.A. Martinello, J. Peccia
*Yale University, USA

Journal of Hospital Infection (2025) 162, 95-105

背景

病院のシンク配水管は、医療関連感染症の原因となる多くの病原体のリザーバーとして知られている。排水管内の細菌は排水口カバーにまで到達し、そこからシンク使用時の飛沫拡散により周囲の表面や患者に拡散する。したがって、シンク表面の洗浄は、排水管と患者の間の伝播を抑制するための重要な介入戦略となる。

目的

本研究の目的は、(1)シンクの各構造における微生物集団の分類ならびに微生物数の特徴を明らかにすること、および(2)洗浄後のシンク表面における細菌再定着の動態および発生源を評価することであった。

方法

ニューヘイブン(米国、コネチカット州)の病院 1 施設の複数のシンクについて、表面の洗浄/消毒という介入の前後に、排水管、排水口カバー、シンク洗面台、飲料用水道水、およびPトラップ内の液体からサンプル採取を行った(N = 251)。細菌数およびその分類を、培養コロニー数、デジタルドロップレットPCR、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法(MALDI-TOF)、および16S rRNA 遺伝子アンプリコンシークエンシングにより評価した。

結果

排水管のバイオフィルムの細菌数は中央値で 1.80 × 108 16S rRNA 遺伝子コピー数/cm2 および 2.06 × 106 cfu/cm2 であり、これはシンク表面上の細菌数と相関していた。廊下のシンクは、病室のシンクよりも頻繁に使用されていたが、細菌数がより多かった。排水管の微生物集団は、主にノボスフィンゴビウム(novosphingobium)属菌およびスフィンゴビウム(sphingobium)属菌から成っており、アシネトバクター属菌、シュードモナス属菌、レジオネラ属菌、およびステノトロホモナス(stenotrophomonas)属菌が検出された。シンクの表面には、大量のマイコバクテリア、メチロバクテリウム(Methylobacterium)属菌—メチロルブルム(methylorubrum)属菌、およびスフィンゴビウム属菌、ならびに皮膚細菌叢でよくみられる細菌属(例えば、コリネバクテリウム[corynebacterium]属菌、ブドウ球菌[staphylococcus]属菌、ストレプトコッカス(Streptococcus)属菌)が認められた。洗浄/消毒の直後、排水口カバーには培養可能な細菌は全般的に検出されなくなり、細菌の遺伝子コピー数は減少したが、24 時間以内に洗浄前のレベルの 80 %に戻った。7 日後、再定着した細菌の 9.2%は排水管に由来し、15.7%は水道水に由来していた。

結論

本研究は、病院のシンク表面における病原体数に影響を及ぼす因子についての、またルーチンの洗浄および消毒の限界についてのわれわれの理解に貢献する。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント

病院シンクの排水管への細菌の定着は、院内感染のリザーバーとなる。グラム陰性菌、なかでも腸内細菌目細菌の耐性菌がこの部位に定着することで、院内感染の収束をしばしば困難にする。本研究での結果を踏まえ対策案として、少なくとも 1 日 1 回以上の手洗いシンクの消毒が必要とし、シンク表面と排水管の両者の消毒を提案しているが、決定的な解決策ではない。細菌定着がしにくい構造、水はねや排水管の位置など、最適なシンクの設計を再考し、根本的な解決策を期待する。

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