成人におけるクレブシエラ(Klebsiella)感染症の術後リスク:後向き症例対照研究
Postoperative risk of infection with klebsiella in adults — a retrospective case—control study J.L.G. Haitsma Mulier*, M. Falcone, G. Tiseo, A.M. Azzini, R. Scardellato, E. Franceschini, S. Tafuri, M. Merli, B. Carević, E. Roilides, N.L.J. van Sluis, D. Bottigliengo, V. Vella, C.H. van Werkhoven, C. Alaimo *University Medical Centre Utrecht, The Netherlands Journal of Hospital Infection (2025) 162, 26-35
背景
クレブシエラ(Klebsiella)属菌および新興の多剤耐性株による院内感染は、持続的な懸念事項である。高リスクグループの同定は、ワクチンなどの予防的介入の評価において極めて重要である。本研究では待機手術を受ける成人患者において、術後クレブシエラ感染症の発生率を明らかにし、その予測モデルを作製した。
方法
欧州の病院 7 施設における本多施設後向き症例対照研究には、2012 年から 2021 年の間に待機的手術を受けた 50 歳以上の患者を組み入れた。多変量ロジスティック回帰を用いて、術後クレブシエラ感染症のリスクをモデル化し、試験エンリッチメントのシナリオを検討した。
結果
適格として同定された手術 139,778 件中、1,781 件を対象とし、患者 840 例は術後クレブシエラ感染症を有し、941 例は有さなかった。術後クレブシエラ感染症の発生率は 1.38%(95%信頼区間 1.24 ~ 1.54%)であった。術前のクレブシエラ保菌、消化管手術、腹部手術、外傷手術、ならびに慢性心血管疾患が、術後クレブシエラ感染症の独立予測因子であった。最小侵襲手術および周術期抗菌薬予防投与は、低リスクを予測した。試験エンリッチメントのシミュレーションから、予測リスクが 2%を超える患者を登録した場合、必要となる試験参加者数が 72%低下することが示された。
結論
クレブシエラ保菌状態および複数の臨床因子を組み込んだ多変量モデルは、待機的手術を受ける患者におけるクレブシエラ感染症を正確に予測した。このモデルは高リスクの患者を選択でき、ワクチン接種を含む予防的介入の第 3 相試験の有効性を高める。
監訳者コメント:
欧米では、NDM 型および KPC 型カルバペネマーゼ産生の多剤耐性クレブシエラ属菌感染症が深刻な課題であり、ワクチン開発が進展している。今後は、ハイリスク患者を対象とした術前の保菌スクリーニング、除菌介入、ワクチン接種の導入が進められていくであろう。
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