救急部における病院ロジスティクスで用いられる自律型モバイルロボットに対する消毒方法の評価
Evaluation of disinfection methods for autonomous mobile robots used in hospital logistics in emergency departments P. Kardas*, F. Bielec, M. Brauncajs, P. Lewek, D. Timler, E. Łojewska, M. Chiurazzi, N.N. Dei, G. Ciuti, R.J. Ros, V.S. Estevan, A. Maccaro, L. Pecchia, B. Merino, A. Medrano, T. Penzel, G. Fico *Medical University of Lodz, Poland Journal of Hospital Infection (2025) 162, 17-25
背景
自律型モバイルロボット(AMR)は、業務の能率化、スタッフの疲労軽減、および感染リスクの最小化を目的に、病院ロジスティクスでの使用、特に救急部などの高リスク区域での使用が増加している。しかし、AMR の有効な消毒は、特に多剤耐性微生物の拡散を予防するためのソリューションとして、依然として極めて重要な関心事項である。
目的
本研究では、実際の病院ロジスティクス環境における AMR に対する様々な消毒方法についての微生物学的清浄度および有効性の評価を、特に救急部におけるその適用に焦点を当てて行った。
方法
病院ロジスティクス用にデザインされた AMR である HOSBOT を、3 次病院 1 施設で 2 週間にわたり展開し、生物材料サンプルの輸送について検証した。微生物学的汚染の評価を AMR の複数部位において消毒の前後に、2 つの方法、すなわち標準的な消毒薬による手動拭き取り、および低温蒸気化過酸化水素による非接触式燻蒸消毒を用いて行った。汚染レベルの評価を、定量的および定性的微生物学的方法を用い、クリティカルケア環境について米国疾病対策センター(CDC)から推奨されている基準値(< 2.5 コロニー形成単位[cfu]/cm2)を達成基準とみなして行った。
結果
細菌汚染は、AMR のすべての部位で基準値を超えていた。2 つの消毒法はいずれも、汚染を有意に低減した。手動拭き取りは細菌数を基準値未満にまで低減し、真菌の増殖を根絶した一方、燻蒸消毒は細菌汚染には効果的でも真菌汚染には効果がなかった。また燻蒸消毒は、到達困難な部位では CDC による清浄度基準を満たすことができなかった。
結論
手動拭き取りと燻蒸消毒はいずれも細菌汚染を効果的に低減したが、真菌の根絶においては拭き取りの方でより良い結果が示された。燻蒸消毒には、高濃度の消毒薬使用、別の化学物質の適用などの改善が必要である。今回の結果は、臨床環境における AMR の使用を支持するだけでなく、安全と有効性のために効果的な消毒薬が重要であることも強調している。
監訳者コメント:
近年、医療機関で自律走行搬送ロボット(AMR)の導入が加速している。そのため、ロボット表面の微生物学的清浄度を維持するための消毒手順の確立が重要である。AMR は構造が複雑であることから、本研究では手作業の清拭と、死角への到達を狙った過酸化水素蒸気燻蒸を比較した。結果、過酸化水素蒸気燻燻蒸は真菌に対する効果が限定的であった。今後のAMR 開発にあたっては、清掃・消毒のしやすさを前提とした設計(表面材の選定、分解容易性、死角最小化)が不可欠である。
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