十二指腸内視鏡に関連する保菌および十二指腸内視鏡に関連する感染症のリスクを評価する:前向き観察研究★
Evaluating the risk of duodenoscope-associated colonization and duodenoscope-associated infection: a prospective observational study K. van der Ploeg*, C.H.W. Klaassen, S.H.J. Renkens, B.C.G.C. Mason-Slingerland, J.A. Severin, M.J. Bruno, M.C. Vos *Erasmus MC University Medical Center, The Netherlands Journal of Hospital Infection (2025) 160, 101-108
背景
汚染された十二指腸内視鏡による内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)後の十二指腸内視鏡に関連する保菌(DAC)および感染症(DAI)のリスクについては依然として明らかでない。これらのイベントの発生率を明らかにすることは、予防戦略を作成する上で不可欠である。
目的
DAC および DAI の発生率を評価すること。
方法
本前向き観察研究には、2022 年 1 月から 2023 年 12 月にかけて ERCP を受けた成人患者を組み入れた。各手技の実施前に十二指腸内視鏡からサンプル採取を行った。汚染は、腸管または口腔に由来する微生物の存在と定義した。ERCP の実施後、培養結果が得られた時点で、汚染された十二指腸内視鏡に曝露された患者に対して便サンプルの提供を依頼し、6 か月間にわたり追跡調査を行った。患者サンプルおよび臨床培養で分離された微生物を、十二指腸内視鏡で得られた結果と比較した。全ゲノムシークエンシング(WGS)を用いて DAC または DAI を確認した。
結果
ERCP を受けた患者 341 例のうち、手技 73 件(21.4%)で腸管または口腔に由来する微生物に汚染された十二指腸内視鏡が関与していた。本研究期間中に、十二指腸内視鏡に関連する感染症のアウトブレイクは発生しなかった。便サンプルは患者 73 例中 45 例(61.6%)で提供された。さらに、臨床培養から得られた腸管または口腔に由来する 80 の微生物、ならびに残存した患者サンプル 37 個が保存された。患者 6 例に由来する、十二指腸内視鏡由来の微生物と患者由来の微生物のペア 8 組に対して WGS を実施した。DAC または DAI の症例は検出されなかった。
結論
アウトブレイクではない状況で、月 1 回の定期微生物学的サーベイランスおよび十二指腸内視鏡に対する隔離プロトコールに基づくと、DAC および DAI のリスクは低いようであった。これらの結果から、DAC または DAI に対する集中的な患者サーベイランスの価値は低いことが示唆される。これらの結果を確認し、DAC および DAI のリスク因子に関する知識のギャップに取り組むために、さらなる研究が必要である。
監訳者コメント :
本研究はオランダで実施された検討である。オランダは主に ESGE(European Society of Gastrointestinal Endoscopy)-ESGENA(European Society of Gastroenterology Nurses and Associates)のガイドラインに準拠している。これによるとサーベイランス頻度は 3 か月毎(年 1 回全機器)、汚染時即時使用停止、アウトブレイク管理は多職種で対応、プロセス検証は EN ISO 15883 が必須となっている。日本でも内視鏡関連の感染対策マニュアルなどにあるように感染対策の体制が整っているが、感染管理体制やサーベイランスの頻度、報告システムの違い、アウトブレイク対応時など施設間差がある。日本の医療機関が同様の成果を得るためには、オランダと同等レベルの感染管理体制の整備が前提条件となる。
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