レベル IV 新生児集中治療室におけるバンコマイシン適正使用支援プログラムの有効性を評価する

2025.04.02

Evaluating the effectiveness of a vancomycin stewardship programme in a level IV neonatal intensive care unit

M. Tas*, E. Onal, A. Tapisiz, S. Bas, I.M. Hirfanoglu, H. Tezer, C. Turkyilmaz, E. Ergenekon, E. Koc
*Gazi University Medical Faculty, Turkey

Journal of Hospital Infection (2025) 158, 11-18

背景

既知の耐性感染症に対するバンコマイシンの使用を制限することが推奨されているにもかかわらず、バンコマイシンは依然として新生児集中治療室(NICU)において最もよく処方される抗菌薬の 1 つである。不要な抗菌薬曝露を減らすための最も効果的な方法の 1 つは、抗菌薬適正使用支援プログラム(ASP)を実施することである。

目的

本研究の目的は、当院 NICU に入院した新生児を対象に、バンコマイシンの使用の減少における ASP の有効性を評価することであった。

方法

本研究は、質の改善(QI)イニシアチブのための準実験的単一施設研究であった。バンコマイシンの使用を制限するための介入として、新生児集中治療チームの教育、バンコマイシン療法の標準化、前向きの監査とフィードバックなどを実施した。介入前期間と介入後期間とを比較した。

結果

バンコマイシン治療の開始は、介入前期間の 166 回から適正使用支援の実施後には 71回で、57.2%減少した。1,000 患者日あたりの総バンコマイシン治療日数は、研究期間中に 113 から 45 まで徐々に減少した(60.2%、P < 0.001)。バンコマイシン治療を開始した患者の培養におけるグラム陽性菌増殖の増加が認められた(P = 0.04)。2 コース以上のバンコマイシン治療を受けた患者数は 85.7%減少した(P = 0.03)。

結論

本研究では、有効な集学的戦略を実施することにより、NICU におけるバンコマイシン曝露を有意に減少させることが可能であることが示された。NICU において ASP の手法および管理を適用することは不可欠であり、入院期間の延長または死亡率の増加を伴うことなく達成可能である。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント

NICU、そして VCM と対象を絞って実践的な介入を行い、その効果を評価した研究である。VCM 使用量の減少にもかかわらず、死亡率や入院期間に大きな変化がなかった点が、研究結果の要点として挙げられる。また、stewardship の取り組みとしては、CRBSI 全般への対策や日々のラウンド時の丁寧なコミュニケーションなども含まれており、我々の日々の取り組み、さらにはそれを研究という形でいかにまとめるかという観点でも参考になる論文である。

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