シンガポールの急性期ケア 3 次病院の新生児集中治療室におけるセラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)のアウトブレイク

2025.02.11

Serratia marcescens outbreak at a neonatal intensive care unit in an acute care tertiary hospital in Singapore

B. Shaik Ismail*, H.X. Toh, J.H. Seah, K.Y. Tan, L.C. Lee, Y.Y. Tay, K.C. Khong, A.W.M. Seet , K.C. Tesalona, A.J.H. Ngeow, S.K.Y. Ho, W.B. Poon, D.C.M. Lai, K.K.K. Ko, M.L. Ling
*Singapore General Hospital, Singapore

Journal of Hospital Infection (2025) 156, 21-25

背景

セラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)は、腸内細菌目の好気性グラム陰性桿菌で、病院関連感染症の原因として浮上している。

目的

S. marcescens の感染または保菌の新生児患者 5 例を巻き込んだアウトブレイクの疫学的・診断的・遺伝学的調査、および感染制御介入について報告すること。

方法

シンガポールの急性期ケア 3 次病院の 3 区域に分けられた 28 床の新生児ユニットでアウトブレイクが発生した。この 3 区域は、共用待合室のある陰圧の空気感染隔離室 2 部屋、新生児集中治療室(NICU)10 床、高度依存性病床16 床であった。可能性のある環境感染源を特定するために、区域内の患者と患者周囲の環境において S. marcescens のスクリーニングを実施した。クローン関連性および可能性のある伝播パターンを明らかにするために、得られた分離株の全ゲノムシークエンシング(WGS)解析を実施した。症例の迅速隔離、器具および環境の消毒の強化、推奨手指衛生法としての擦式アルコール製剤の使用、患者への感染予防に関するオリエンテーションの強化、実践の見直し、監視、ならびにコンプライアンス不履行に関する即時フィードバックなどの感染制御介入を実施した。

結果

S. marcescens の感染または保菌の新生児 5 例がこのアウトブレイクに巻き込まれた。4 例は感染症例で、1 例は接触者追跡調査により特定された。NICU の 3 カ所のシンクとミルク調乳室のシンクの検査の結果が、S. marcescens 陽性であった。WGS により、NICU の 2 カ所のシンクおよびミルク調乳室のシンクの菌株と、新生児 5 例の菌株のクロナリティが確認された。

結論

今回のアウトブレイクを封じ込めるために、多面的対策が必要であった。WGS 解析により、シンクのバイオフィルムとアウトブレイクとの関連が示された。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント

新生児集中治療室(NICU)におけ るSerratia marcescens アウトブレイク事例を、検出菌株の全ゲノム解析を用いて評価した報告である。患児 5例に加え、シンク 3 カ所および調乳室から同一クラスター株が検出され、環境を介した伝播の可能性が示唆された。感染児の病歴や、手指衛生の強化、シンク使用中止、超音波機器消毒手順の標準化、調乳室管理など、具体的な感染対策についても触れられている。S. marcescens による NICU アウトブレイクは繰り返し報じられる問題であるが、基本に立ち返り、あらためて確認しておきたい内容である。

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