オランダの病院におけるカンジダ・オーリス(Candida auris):準備はできているか?

2025.02.11

Candida auris in Dutch hospitals: are we ready for it?

L.M.L. Dix*, D.W. Notermans, C. Schneeberger, K. van Dijk
*National Institute for Public Health and the Environment (RIVM), The Netherlands

Journal of Hospital Infection (2025) 156, 106-112

背景

カンジダ・オーリス(Candida auris)は、院内アウトブレイクを引き起こす可能性があり、診断、治療、除菌および感染予防に関する課題をもたらす。オランダには C. auris に関する基準またはガイドラインはなく、現在の病院での対処法は不明である。そこで本研究では、オランダの病院は C. auris の侵入に対して準備ができているかどうかを評価した。

方法

2024 年の春に、スクリーニング、診断法、感染予防およびアウトブレイクに関するオンライン質問票を、医療微生物学者および感染予防実務者に配布した。

結果

病院 58 施設を含む 52 通の質問票が処理された。ほとんどの参加者(60%)は C. auris 保菌のスクリーニングを実施しておらず、51%ではスクリーニング手順を記述したプロトコールがなかった。医療従事者がスクリーニングを受けることはまれであった。スクリーニングの部位およびスワブの数に差異があった。すべての回答者が、C. auris を有する患者は隔離すると回答しており、71%に隔離方法を記述したプロトコールがあった。ほとんどの病院は、C. auris の検出後に追加の洗浄による予防策を講じていた。C. auris のアウトブレイクが発生したことのある病院はなく、29%の病院はアウトブレイク時のプロトコールを有していた。隔離中止の手順は 31%に存在したが、10%では患者の C. auris が検出されていないことを明確にする手順がない。診断プロトコール(53%の病院で利用可能)は主に培養に基づいたが、実施方法には差異があった。稀に分子診断法が用いられた(12%)。大半の施設ではスクリーニングもおこなわれておらず、アウトブレイク対策を記載したプロトコールもなかった。

結論

オランダの病院では C. auris のスクリーニング、診断法、感染予防、制御およびアウトブレイク管理は様々であり、ほとんどの病院は C. auris に対する十分な準備が整っていない。C. auris に対する準備の不足は国際的な懸念であるため、ガイダンスがこの必要性を満たすのに役立つと考えられる。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント

C. aurisは日本で 2009 年に分離された菌種である。すでに世界で流行が認められ、世界保健機構(WHO)は本菌を真菌優先病原体リストの 1 つとして位置づけている。本菌は遺伝子型(クレード)が複数あり、地域によって感受性パターンが異なるが、日本で 2020 年に海外株による C. auris 菌血症で死亡例が報告されたことから厚労省は「多剤耐性で重篤な感染症を引き起こす恐れのあるカンジダ・アウリス(Candida auris)について」を情報提供している。今回の論文はオランダの現状を示したものであるが、日本ではすでに国立国際医療研究センター 国際感染症センター(https://dcc-irs.ncgm.go.jp/topics/candida-auris/candida-auris.html)や学会などで本菌の疫学や、診断法、感染対策、アウトブレイク対策について情報共有がなされている。

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