ヒータークーラーユニットにおけるマイコバクテリウム・ゴルドナエ(Mycobacterium gordonae)の出現:クロラミン T によるブースター消毒を頻繁に行った装置の 5 年にわたる前向きサーベイランス

2025.01.17

Emergence of Mycobacterium gordonae in heater-cooler units: a five-year prospective surveillance of devices frequently subjected to chloramine-T booster disinfection

S. Ditommaso*, J. Garlasco, G. Memoli, A. Curtoni, A. Bondi, A. Ceccarelli, M. Giacomuzzi
*University of Turin, Italy

Journal of Hospital Infection (2025) 155, 9-16

背景

世界的に、LivaNova ヒータークーラーユニットでマイコバクテリウム・キマイラ(Mycobacterium chimaera)が検出されたことから、他のヒータークーラーユニットへの交換が行われたが、他のメーカーで生産されたヒータークーラーユニットでも非結核性抗酸菌(NTM)が報告されている。当地域のほぼすべての病院において、LivaNova ヒータークーラーユニットは Maquet HCU40 に交換され、クロラミン T による定期的な消毒が行われている。

目的

Maquet 装置の 63 か月間の使用期間にわたるサーベイランスの結果を報告すること、また NTM 陽性率の経時的傾向を提示すること。

方法

Maquet 装置 29 台(HCU40 および HU35)について、2 種類の培養方法およびプロピジウムモノアジド PCR によりモニタリングを行った。NTM 陽性率の傾向について、Locally Estimated Scatterplot Smoothing(LOESS)回帰により評価し、次いでセグメント化ロジスティック回帰により経時的にモデル化した。

結果

本研究期間中に得られたデータから、陽性率の顕著な上昇、とくに 3 年目以降の顕著な上昇が示されている(最大勾配変化は 1,280 日時点)。NTM は水サンプル 150 個(37.2%)で分離され、HCU40 および HU35 装置のそれぞれ 100%および 62%に NTM の定着が認められた。最も多く検出された菌種はマイコバクテリウム・ゴルドナエ(Mycobacterium gordonae)(73%)、次いでマイコバクテリウム・ケロナエ(Mycobacterium chelonae)(41%)および Mycobacterium paragordonae(11%)であった。

結論

クロラミン T を用いた消毒による予防戦略は、Maquet 装置における NTM 定着を効果的に低減しなかった。現時点で、Maquet 装置に関連した術後侵襲性感染症の症例は報告されていないが、本研究の微生物学的結果から、(1)装置の安全性を高めるための変更のデザイン、(2)他の代替分子を含め、新たな消毒プロトコールの研究および開発の必要性が強調される。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント

この研究では、5%クロラミン-T 溶液による 24 時間の強化消毒を実施したが、NTM の完全除去には至らず、汚染の進行や耐性の問題が残存した。この結果は、既存の消毒薬による対策では根本的な解決が困難であることを示している。今後は、新規分子を用いた消毒剤の開発や装置設計の改良など、より抜本的な対策の確立が不可欠である。

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