オランダの医療施設におけるバンコマイシン耐性エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)の管理:全国調査★★
Management of vancomycin-resistant Enterococcus faecium in Dutch healthcare institutes: a nationwide survey M. Mulder*, K.E.W. Vendrik, S.A.M. van Kessel, D.W. Notermans, A.F. Schoffelen, J. Flipse, A.P.A. Hendrickx, W.C. van der Zwet, C. Schneeberger-van der Linden *National Institute for Public Health and the Environment (RIVM), The Netherlands Journal of Hospital Infection (2025) 155, 51-59
背景
バンコマイシン耐性エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)(VREfm)は日和見病原体で、病院内でアウトブレイクを引き起こし得る。オランダでは、VREfm 管理の様々な側面に関するいくつかの国内ガイドラインおよびガイダンス文書が利用可能である。利用可能なガイドラインのほとんどは、病院環境を対象に記されたものであり、長期ケア施設(LTCF)を対象としたものはほとんどない。さらに、VREfm 管理のすべての側面が扱われているわけではなく、推奨事項は様々で、これらのガイドラインに対する遵守レベルについては不明である。本研究の目的は、スクリーニング、診断法および感染制御方策について、オランダの医療施設におけるルーチンの VREfm 管理方針を明らかにすることであった。
方法
オランダの病院および LTCF の代表宛にオンライン質問票を送付した。この質問票には、VRE の定義、スクリーニング、診断法、患者隔離、洗浄手技、VREfm クリアランスおよび VREfm アウトブレイクに関する質問を含めた。
結果
本質問票に対して、病院 61 施設(回答率 84.1%)およびLTCF 57 施設(ほとんどがナーシングホーム)から回答が得られた。ほとんどの病院が過去 10 年間に VREfm アウトブレイクが発生したと報告していた一方、LTCF では 1 施設のみが 1 回のアウトブレイクを報告した。VREfm スクリーニングを実施していたのは、病院の 87%に対して LTCF では 50%であった。VREfm 陽性患者を隔離していたのは、病院の 98%および LTCF の 83%であった。患者ファイルでVREfm 陽性患者というラベルを解除するためのプロトコールを規定していたのは、病院の 84%およびLTCFの 51%であった。これらの方策の詳細には、医療施設間で大きな違いがあった。
結論
本研究から、オランダのほとんどの病院および一部の LTCF が、VREfm 管理のための標準手順をある程度のレベルで有していることが示されたが、これらの方策の包括性および詳細は病院によって異なっている。より統一的な方針があれば、地域/全国レベルでの VREfm に関するデータの比較可能性が改善するであろう。
監訳者コメント:
オランダでの VREfm 管理は徹底されて実施されていることが伺えるが、実際オランダの入院患者からの臨床分離株における VREfm の E. faecium に占める割合は 0.4%と極めて低い。これは徹底した感染対策によるものであると同時に抗菌薬適正使用の結果でもあるだろう。長期療養施設においてもある程度の感染対策が実施されているようであるが、実態は十分に把握できておらず、病院施設での実態とあわせて、統一された方針のもとにサーベイランスが実施されることが期待される。
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