医療従事者における SARS-CoV-2 感染症の感染予防・管理上のリスク因子:グローバル多施設共同症例対照研究
Infection prevention and control risk factors for SARS-CoV-2 infection in health workers: a global, multi-centre, case-control study A. Cassini*, Y. Mo, A. Simniceanu, G. Gon, B.J. Cowling, B. Allegranzi, the COVID-19 in Health Workers Collaborative Group *World Health Organization, Switzerland Journal of Hospital Infection (2025) 155, 40-50
背景
医療従事者は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック時に、職業的リスク因子のために重症急性呼吸器症候群コロナウイルス 2(SARS-CoV-2)感染症の高いリスクに曝された。本研究は、World Health Organization(WHO)Unity Studies イニシアチブの一環として、こうしたリスク因子の特徴を明らかにすることを目的とした。
方法
本グローバル多施設共同コホート内症例対照研究は、21 か国の医療施設 121 施設で実施された。症例は、検査で SARS-CoV-2 感染陽性を認め、登録前 14 日間に COVID-19 患者との職業的曝露が記録された医療従事者とした。対照は、同一施設において同様の曝露が認められるが、血清陰性であった医療従事者を登録した。症例および対照の状態は、ベースラインおよび 3 ~ 4 週間後の血清学的検査で確認した。構造化質問票を用いて、人口統計学的データおよび感染リスク因子のデータを収集した。
結果
2020 年 6 月から 2021 年 12 月にわたり、症例 1,213 例および対照 1,844 例についてデータを得た。SARS-CoV-2 感染症のリスクは、個人防護具(PPE)ガイドラインの不遵守(補正オッズ比[aOR]1.67、95%信頼区間[CI]1.32 ~ 2.12)および患者との接触後における手指衛生の一貫しない実施(aOR 2.52、95%CI 1.72 ~ 3.68)と関連した。COVID-19 患者との直接の濃厚接触も、とくに長時間の接触時(15 分超)は、SARS-CoV-2 感染症リスクの上昇と関連した。SARS-CoV-2 感染症リスクの低下と関連した項目は、エアロゾル発生手技時のマスク使用、ならびに汚染された物質/表面との接触時における手袋、およびガウンまたはカバーオールの使用であった。医療従事者において、ルーチンケア時のマスク使用とサージカルマスク使用との間で差はなかった。
結論
感染予防・制御方策の適切な実施と PPE の使用は、医療従事者をSARS-CoV-2 感染症から保護する上で、依然として優先度が高い。
監訳者コメント:
この研究は、医療従事者の SARS-CoV-2 感染リスクを分析し、PPE の適切な使用や手指衛生といった基本的な感染対策が、感染予防において極めて重要であることを改めて示している。特に、高リスク手技における N95 マスクの有効性が示される一方、対策の不徹底が感染リスクを増大させる点が明らかとなった。当たり前ではあるが、改めて基本的な感染対策手技を実際に実行することが重要であることを示唆する論文である。
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