臨床検査室における検査室内感染およびブルセラ曝露リスク事象後の感染発生率:システマティックレビューおよびメタアナリシス

2025.01.17

Laboratory-acquired infection in clinical laboratories and the incidence rate after Brucella exposure risk events: a systematic review and meta-analysis

M. Wang*, W. Sun, C. Zhou, S. Wang, Q. Shi, J. Lin, H. Mi, B. Hu, J. Pan, X. Gao
*Fudan University, China

Journal of Hospital Infection (2025) 155, 135-144

背景

臨床微生物検査室のスタッフは、臨床検体に病原性がある可能性があるために、職業感染の高いリスクに直面している。

目的

検査室内感染の特徴を要約し、臨床検査室での曝露インシデントを検討する。また、メタアナリシスを実施し、ブルセラ(Brucella)曝露後の感染発生率を推定するとともに、曝露後予防(PEP)の有効性を評価した。

方法

PubMed、Embase、Web of Science、CNKI、Wanfang、CMB および ABSA LAI データベースの系統的検索により、1990 年 1月 1日から 2023 年 8 月 31 日までに公表された関連文献を、症例報告および臨床検査室での曝露リスク事象を含めて抽出した。負の二項回帰を用いて、検査室内感染の年間報告件数の相対的増加を推定した。メタアナリシスを実施し、ブルセラ曝露リスク事象後の、曝露を受けた臨床検査室スタッフにおける検査室内感染発生率を推定した。

結果

合計 164 件の検査室内感染が病院の臨床検査室で報告された。負の二項回帰分析により、年間検査室内感染報告件数に有意な減少は示されなかった(相対リスク[95%信頼区間]:0.98[0.97 ~ 1.00]、P = 0.052)。主要な病原体はブルセラ属菌(55.5%)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)(7.3%)およびソンネ菌(Shigella sonnei)(5.5%)であった。メタアナリシスにより、臨床検査室スタッフにおけるブルセラ関連検査室内感染の発生率は、100,000 名あたり 60 件であった。高リスクのブルセラインシデントにさらされた臨床検査室スタッフは特に高い感染リスクに直面し、発生率は 100,000 名あたり 80 件と推定された。高リスクのブルセラ曝露に対して曝露後予防(PEP)を講じた場合と比較して、高リスクのブルセラ曝露に対して曝露後予防(PEP)を講じなかった場合は、ブルセラ感染のリスクが 6.33 倍上昇した。

結論

臨床検査室スタッフは依然として感染リスクにさらされており、主にブルセラ感染に起因する検査室内感染症例の報告件数に減少はみられない。曝露後予防(PEP)が、高リスクのブルセラ曝露に対して有効であることが示された。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント

ブルセラ症とは、ブルセラ属菌に感染することによって起こる感染症(波状熱、マルタ熱、地中海熱とも呼ばれる)。地中海地域、中国、インド、西アジア地方、中南米、アフリカ地方などでよくみられ、世界的には毎年およそ 50 万人の患者が発生している(日本国内での患者は年間数例ほどと少ない)。曝露後予防は効果的であることは理解できるが、バイオセイフティの作業環境対策のレベルを高めることが重要であろう。

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