スイスの長期ケア施設において呼吸器感染症に対する抗菌薬に関連する因子
Factors associated with antibiotics for respiratory infections in Swiss long-term care facilities A. Roux*, D-L. Vu, A. Niquille, E. Rubli Truchard, T. Bizzozzero, A. Tahar, T. Morlan, J. Colin, D. Akpokavie, M. Grandin, A. Merkly, A. Cassini, E. Glampedakis, T. Brahier, V. Suttels, V. Prendki, N. Boillat-Blanco *Lausanne University Hospital and University of Lausanne, Switzerland Journal of Hospital Infection (2024) 153, 90-98
背景
長期ケア施設(LTCF)の入居者は、地域に居住する高齢者と比べて、抗菌薬の処方を受ける割合が 2 倍であり、複数の研究から LTCF における処方の最大半数が不適切であると報告されている。
目的
下気道感染症(LRTI)を有する LTCF 入居者において、全般的および不適切な抗菌薬処方に寄与する因子を明らかにすること。
方法
本多施設共同前向き観察研究では、2022 年から 2023 年の冬季に、スイス西部の LTCF 32 施設において LRTI を有する入居者を登録した。入居者に、LRTI 発症後 3 日以内に、肺超音波検査(LUS)を実施し、肺炎診断の判断基準とした。多変量ロジスティック回帰および後退選択法を用い、P < 0.1 をカットオフとして、人口統計学的変数、バイタルサイン、診断検査、および LTCF 特性の中から、(i)抗菌薬処方および(ii)不適切な処方と関連する因子を特定した。
結果
入居者計 114 例を組み入れ、63%が女性、年齢中央値は 87 歳であった。入居者 59 例(52%)が診断検査を受け、50 例(44%)は呼吸器ウイルスに対する PCRを受け、16 例(14%)は血液検査により C 反応性蛋白値および/または血算を調べた。入居者 63 例(55%)が抗菌薬の処方を受けた。抗菌薬処方に関連する因子は、Rockwood Clinical Frailty Scale スコア≧ 7、酸素飽和度< 92%、血液検査の実施、農村部の LTCF ならびに女性医師であった。抗菌薬を使用していた入居者のうち、48 例(74%)が不適切な処方を受けており、これに対する保護因子は呼吸器ウイルスに対する PCR 検査の実施であった。
結論
LRTI 入居者の半数は抗菌薬の処方を受けており、欧州の LTCF における処方率(53 ~ 80%)でみると低い範囲であった一方、大部分の抗菌薬処方は不適切であった。診断検査の使用は、全体的および不適切な処方の減少と相関しており、この結果から、LTCF における処方行為を最適化するために診断検査の使用が推奨される。
監訳者コメント:
スイスの長期介護施設において、肺超音波検査(LUS)や呼吸器ウイルス PCR 検査を用いて抗菌薬の適切性を評価した研究。不適切な抗菌薬投与が 74%と高率で発生しており、特に肺炎が確認されない症例での不要な処方が多かった。胸部レントゲンや CT が使用しづらい環境で、LUS は簡便かつ高精度な診断ツールとして重要であり、簡易病原体検査とともに抗菌薬の適正使用に貢献する可能性が示された。
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