多剤耐性グラム陰性菌に対する接触予防策の解釈の地域差:横断的調査

2024.10.31

Regional variation in the interpretation of contact precautions for multi-drug-resistant Gram-negative bacteria: a cross-sectional survey

A. van Veen*, I. de Goeij, M. Damen, E.G.W. Huijskens, S. Paltansing, M. van Rijn, R.G. Bentvelsen, J. Veenemans, M. van der Linden, M.C. Vos, J.A. Severin, on behalf of the Infection Prevention and Antimicrobial Resistance Care Network South-western Netherlands
*Erasmus MC University Medical Centre, The Netherlands

Journal of Hospital Infection (2024) 152, 1-12

背景

カルバペネマーゼ産生腸内細菌目細菌(CPE)、カルバペネマーゼ産生緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)(CPPA)および基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ産生腸内細菌目細菌(ESBL-E)を保有する患者のケアを行う際には、接触予防策が推奨される。

目的

本研究の目的は、オランダ南西部の 11 施設の病院において、CPE、CPPA または ESBL-E保有患者に対する非 ICU の病院環境での接触予防策および関連する感染・予防制御(IPC)手段の解釈を決定することであった。

方法

横断的調査を立ち上げ、個人防護具の使用、面会者の IPC 手段、清掃および消毒、外来患者ケア時の予防策、追跡調査方法などの、実施されたすべての IPC 手段に関する情報を収集した。病院 11 施設すべてに、2020 年 11 月から 2021 年 4 月に参加を呼びかけた。

結果

調査には各病院とともに回答を記入した。すべての病院が、入院患者ケア時および日帰り入院時に CPE および CPPA 保有患者に対して隔離予防策を導入し、病院 10 施設(90.9%)が ESBL-E 保有患者に対して隔離予防策を適用していた。隔離された患者との身体的接触があるときには、手袋とガウンが常に用いられていた。面会者の IPC 手段、用いられる清掃および消毒用製剤、外来患者ケア時の予防策において、大きな差異が認められた。病院 4施設(36.4%)は、可能な限り適時に患者を CPE または CPPA 陰性と判定することを目的として CPE または CPPA 保有患者の積極的追跡調査を実施し、2 施設(20.0%)は ESBL-E 保有患者の積極的追跡調査を実施していた。

結論

接触予防策は病院間で解釈が異なり、それによって臨床環境で適用される IPC 手段に地域差が生じている。感染制御指針を病院間で調和させることが、患者移送を円滑化し、多剤耐性グラム陰性菌の伝播を防止する共同的な取り組みに有益となる可能性がある。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント

この論文では、多剤耐性グラム陰性菌(MDR-GNB)の感染防止策において、地域ごとに接触予防策や感染予防管理(IPC)措置の解釈に大きな差があることが示されている。日本でも、地域内の医療機関間の患者転送や連携が MDR-GNB の拡散リスクを高める要因となっている可能性がある。これに対し、感染防止策の標準化と統一を進めることは、MDR-GNB の効果的な拡散防止を図りつつ、感染症診療の質向上に貢献すると考えられる。

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