ミッドラインカテーテルと末梢挿入式中心静脈カテーテルにおける合併症発生率の比較:無作為化対照試験のシステマティックレビューとメタアナリシス
Comparison of complication rates between midline catheters and peripherally inserted central catheters: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials J-Y. Lai*, M-J Wu, M.S.N. Gautama, T-W. Huang *Tzu Chi University, Taiwan Journal of Hospital Infection (2024) 151, 131-139
ミッドラインカテーテル(MC)と末梢挿入式中心静脈カテーテル(PICC)は、患者における確実な血管アクセスにとって不可欠である。いずれも幅広く使用されているにもかかわらず、両カテーテルのリスクを比較した評価、とくに無作為化対照試験(RCT)による比較は依然として少ない。本メタアナリシスでは、主として RCT に焦点を当てて MC および PICC に関連する合併症の発生率を比較評価した。2024 年 4 月までの Cochrane Library、PubMed、Embase、Web of Science、ScienceDirect、Scopus および ProQuest を含むデータベースの包括的な検索を実施した。解析した主要転帰は総合併症およびカテーテル関連血流感染症(CRBSI)とした一方、副次的転帰はカテーテル留置期間および血栓症発生などとした。メタアナリシスは、ランダム効果モデルを用いて実施した。最初に特定した論文 831 報中、患者 608 例を対象とした試験 5 件が組み入れ基準を満たした。MC では PICC と比べて、総合併症の発生率が有意に高かった(相対リスク = 1.95、95%信頼区間 = 1.23 ~ 3.08、P=0.005、I2 = 0%)。MC ではまた、留置時間が短く、早期抜去の実施率が高かった。しかし、MC と PICC の間で、CRBSI または血栓症の発生率に有意差は認められなかった。PICC では MC と比べて、総合併症が少なく、留置期間が長かったことで、MC では早期の抜去がより多い傾向となった。血栓症の発生率は両カテーテル間で同程度であり、このため、個々の患者の病態や治療期間に基づいた、注意深いカテーテル選択が必要であることが明確である。これらの結果を確認し、臨床診療における最適なカテーテル選択の指針を得るには、さらなる研究、とくに新たな RCT が必要である。
監訳者コメント:
この論文の結果を踏まえると、ミッドラインカテーテル(MC)と末梢挿入型中心静脈カテーテル(PICC)の使用は、それぞれの状況に応じた適切な選択が求められる。MC は、短期間(1 週間から 4週間)の静脈アクセスが必要な場合や、コストを抑えたい状況に適している。また、挿入手技が比較的簡単であり、末梢静脈での治療が可能な場合に使用するのが望ましい。一方で、PICC は、長期間(数週間から数か月以上)の静脈アクセスが必要な場合や、中心静脈へのアクセスが求められる治療に適している。合併症を減らし、長期間カテーテルを留置する必要がある患者には、PICC が推奨される。また、高度な挿入技術が可能な環境での使用が求められることも考慮すべきである。両者の選択は、治療期間、必要な静脈アクセスの種類、リスク許容度に基づいて慎重に行うべきである。
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