エンパワーメントされた入院患者は、抗菌薬療法についての共同意思決定に関与している:定量的解析

2024.09.03

Empowered hospitalized patients are involved in shared decision making on antibiotic therapy: a quantitative analysis

A. Chow*, H. Guo, A. Ho, T.M. Ng, D.C-B. Lye
*Office of Clinical Epidemiology, Analytics, and Knowledge (OCEAN), Tan Tock Seng Hospital, Singapore

Journal of Hospital Infection (2024) 151, 109-115

背景

入院患者の半数は抗菌薬の投与を受けるが、抗菌薬療法についての共同意思決定に関与することは稀である。我々は、患者のエンパワーメントと、抗菌薬療法についての共同意思決定への患者の関与との間の関連を理解しようと努めた。

方法

2021 年 3 月から 2022 年 4 月まで、我々は、シンガポールにある 1,600 床の成人総合病院で 1 日以上抗菌薬療法を受けている入院患者の横断的調査を実施した。質問票には、SDM-Q-9 からの共同意思決定への関与についての 7 項目(5 段階の Likert 尺度)と、HCEQ-10 からの患者のエンパワーメントについての 10 項目(4 段階の Likert 尺度)を含めた。多変量ロジスティック回帰モデルを構築し、患者のエンパワーメントについての 3 つの構成概念と、抗菌薬療法についての共同意思決定への関与との間の独立した関連を評価した。

結果

636 例の入院患者は、平均年齢が 57.6(SD 15.5)歳で、61%が男性、37%が高等教育を受けていた。大多数(90%)は自分が抗菌薬療法を受けていることを知っていたが、投与されている抗菌薬の名前を知っていたのは 11%のみであった。年齢、性別、民族、教育水準、入院期間について調整後、決定に高レベルで関与していた患者(補正オッズ比[AOR]3.63、95%信頼区間[CI]2.19 ~ 6.01)、医療従事者とコミュニケーションのあった患者(AOR 1.77、95%CI 1.03 ~ 3.02)、病院での治療をある程度コントロールしていた患者(AOR 1.90、95%CI 1.15 ~ 3.12)は、抗菌薬療法についての共同意思決定に高レベルで関与している可能性が高かった。

結論

決定に関与し、医療従事者とコミュニケーションをとり、病院での治療をコントロールすることで患者のエンパワーメントが向上している入院患者は、病院での抗菌薬療法についての共同意思決定への参加を増やすことができる。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント

患者のエンパワーメントは、服薬遵守、健康成果、生活の質、医療に対する満足度を向上させることが示されているが、入院患者の抗菌薬適正使用への関与を調べた研究は少ない。医療従事者は忙しすぎて、入院患者と共同意思決定に積極的に取り込むことは難しいが、患者教育の一環として考慮するのはよいかもしれない。

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