手術部位感染症の低減を図る抗菌コーティング縫合糸と非コーティング縫合糸の比較:最新のシステマティックレビューとメタアナリシス
Antimicrobial-coated sutures versus non-coated sutures in reducing surgical site infection: an updated systematic review and meta-analysis Y. Yang*, Z. Zhou, R. Ma, J. Ren, X. Wu *Southeast University, China Journal of Hospital Infection (2024) 150, 40-50
背景
抗菌コーティング縫合糸は、縫合糸表面の微生物定着に起因する手術部位感染症(SSI)を回避するための方策のひとつである。
目的
SSI の減少における抗菌コーティング縫合糸の効果を調査すること、ならびに臨床での SSI 予防および抗菌コーティング縫合糸の使用に関する最新の系統的評価のエビデンスを作成すること。
方法
1990 年 10 月 10 日から 2023 年 3 月 3 日までのMEDLINE、Embase、CINAHL、Cochrane、African Index Medicus、WHO Global Health のデータベースにおいて、英語、スペイン語、フランス語に言語制限を設けて検索した。メタアナリシスを用いて、抗菌コーティング縫合糸が SSI に及ぼす影響、ならびにその効果が縫合糸または創傷の種類に影響されるかどうかを評価した。縫合糸および創傷の種類によりサブグループ解析を実施した。最終的に、検索したエビデンスの質を Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation(GRADE)により評価した。
結果
無作為化対照試験(RCT)26 件、観察研究 9 件が選択基準を満たした。抗菌コーティング縫合糸は、SSI リスクを有意に低減させた(RCT:オッズ比[OR]0.74、95%信頼区間 0.63 ~ 0.87、P = 0.0002、観察研究:OR 0.61、95%CI 0.48 ~ 0.76、P < 0.0001)。Polydioxanone Suture Plus 対 Polydioxanone Suture、Vicryl Plus 対 Vicryl、および混合損傷のサブグループ解析のみで、抗菌コーティング縫合糸が有効であるという一貫した結果が示された。GRADE に基づくエビデンスの質は、RCT では中等度であり、観察研究では低かった。
結論
多数の手術患者において術後 SSI のリスクを低減するのに、抗菌コーティング縫合糸は有効である。だが、入手可能なエビデンスの質は中等度/低度であり、多くの研究で利益相反が生じた。
監訳者コメント:
医療関連感染症の対策においては、尿道留置カテーテルや気管内挿管チューブなど、様々な器材において抗菌薬や銀などでコーティングされた商品が発売されている。理論的に感染率を低減させる可能性がある一方で、薬剤耐性の問題やアレルギーの問題なども懸念される。また本研究でも示されているように、利益相反の問題も無視できない。費用対効果も含めて、各施設でメリット・デメリットを勘案して採用の可否を決定する必要があるだろう。
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