皮膚縫合材と消化管手術後の切開手術部位感染症の発生率との関連:システマティックレビューおよびネットワークメタアナリシス

2024.08.18

Association between skin suture devices and incidence of incisional surgical site infection after gastrointestinal surgery: systematic review and network meta-analysis

K. Kouzu*, D. Kabata, H. Shinkawa, S. Shinji, T. Ishinuki, K. Tamura, M. Uchino, H. Ohge, J. Shimizu, S. Haji, Y. Mohri, C. Yamashita, Y. Kitagawa, K. Suzuki, M. Kobayashi, M. Kobayashi, Y. Hanai, H. Nobuhara, H. Imaoka, M. Yoshida, T. Mizuguchi, T. Mayumi, Y. Kitagawa
*National Defence Medical College, Japan

Journal of Hospital Infection (2024) 150, 134-144

背景

開腹手術後の手術部位感染症(SSI)は頻度の高い合併症である。

目的

消化管手術後の切開手術部位感染症(SSI)の発生率が、どの縫合材により減らせるかを、システマティックレビューおよびネットワークメタアナリシスを用いて比較すること。

方法

2000 年 1 月 1 日から 2022 年 12 月 31 日までの CENTRAL、PubMed、ICHUSHI-Web のデータベースを用いて、消化管手術後に非吸収性縫合糸、吸収性縫合糸、スキンステープラー、組織接着剤などの異なる外科用縫合材による処置を受けた患者を対象に切開 SSI 発生率を比較した無作為化臨床試験(RCT)を検索した(最新の検索 2023 年 8 月 23 日)。Cochrane Handbook for Systematic Reviews of Intervention の基準を用いてバイアスリスクを評価した。各比較における統合オッズ比(OR)を推定するために、Mantel-Henszel 法に基づく固定効果逆分散モデルを用いた。

結果

RCT 計 18 件(患者計 5,496 例)を本研究の対象とした。全 SSI は、吸収性縫合糸では、スキンステープラー(OR 0.77、95%信頼区間[CI]0.63 ~ 0.95)、非吸収性縫合糸(OR 0.62、95%CI 0.39 ~ 0.99)よりも有意に少なかったが、吸収性縫合糸と組織接着剤の全 SSI に有意差はなかった。もっとも高い P スコアは、吸収性縫合糸の 0.91 であった。研究の不均一性を推定するファンネルプロットにより、出版バイアスは最小限であることが明らかにされた(Egge 検定 P = 0.271)。

結論

本研究では、消化管手術における吸収性縫合糸は、他のすべての縫合材と比較して切開 SSI を低減することが示された。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント

日本からの研究。外科手術においてどのような縫合糸を使用するかを決定するにあたっては、感染率だけではなく様々なメリットやデメリット、適応が存在するので、その選択や採用については本研究のようなエビデンスとともに、縫合糸を使用する外科医としっかりと検討するのが良い。また本論文ではかなりの文字数がリミテーションの説明に割かれている。是非フルテキストを読んでいただきたい。

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