アフリカにおける医療関連感染症の財政的および経済的コスト

2024.08.18

Financial and economic costs of healthcare-associated infections in Africa

G. Hutton*, C. Chase, R. Kennedy-Walker, H. Hamilton
*Innate Values Ltd., UK

Journal of Hospital Infection (2024) 150, 1-8


背景

医療関連感染症(HAI)は依然として世界的な医療の課題であり、サハラ以南のアフリカでは発生率が上昇している。HAI は疾患や長期の入院、障害の可能性、過剰なコストをもたらし、場合によっては死亡に至ることから、患者とその家族に影響を及ぼす。抗菌薬耐性の拡大によって、HAI のコストは増大しつつある。HAI の主要なリスク因子は、上下水道・衛生(water, sanitation and hygiene:WASH)、環境清掃および医療廃棄物管理の欠如である。サハラ以南のアフリカでは、医療施設の 50%以上でこれらのサービスが欠けている。

目的

サハラ以南のアフリカの 14 か国において、国レベルの HAI に関連するコストを推定した。

方法

経済学的方法により、国別の統計および公表された研究を利用して、医療コスト、生産性の損失、HAI による早期死亡の価値を推定し、経済モデルに追加した。

結果

2022 年の HAI 発生数は 480 万件で、500,000 例が死亡に至ったと推定された。健康に関連した経済的損失は年間 130 億米ドルに上り、これは国内総生産(GDP)の合計の 1.14%に相当し、1 人当たり 15.7 米ドルであった。医療コストは HAI 1 件当たり 500 米ドルで、総医療費の 5.6%を占めた。基本的 WASH の提供にかかるコストは 1人当たり 0.91 米ドルであったが、HAI を 50%減少させることができた場合には、ベネフィット/コスト比は 1.6(財政的な医療費節約のみ)および 8.6(経済的ベネフィット全体)になる可能性がある。

結論

HAI はアフリカ社会に重大な健康上および経済上の負担をかけているが、かなりの部分が予防可能である。医療政策立案者および実務者が、HAI に対応するための政策空間、リソースおよびトレーニングを提供することが重要である。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント

発展途上国においては様々なリソースが限られており、そもそも HAI の発生状況も適切に把握できているかどうか不明である。一方で、比較的単純・簡単な対策で大きな予防効果が得られる可能性もある。また本研究で用いられているような医療関連感染症における費用対効果の検証方法も我々の参考になるだろう。

同カテゴリの記事

2013.03.30

Persistence of mixed staphylococci assemblages following disinfection of hospital room surfaces

2018.05.31

Validation of healthcare-associated infection surveillance in smaller Australian hospitals

2018.06.28

Clinical efficacy of seasonal influenza vaccination: characteristics of two outbreaks of influenza A(H1N1) in immunocompromised patients

JHIサマリー日本語版サイトについて
JHIサマリー日本語版監訳者プロフィール
日本環境感染学会関連用語英和対照表

サイト内検索

レーティング

アーカイブ